のちに判明したところによると、妻を殺害したのは、夫に行方を聞いた2人の甥だったという。片方の甥には15歳になる息子がいるが、長年病弱であった。事件の3日前、息子が高熱と疲労感に襲われており、地元のオジャ(呪術医)にすがった。

少年の病因を問われたオジャは、被害女性が少年に対して「悪意に満ちた目を向けている」ことが原因だと答えたという。女性は「魔女」であり、その「力」をもって少年の健康を害しているとの預言であった。真に受けた2人の甥は、親族である女性の殺害に及んだ。

ジャールカンド州警察は、州内で黒魔術信仰を原因とする殺人事件が多発していると発表している。2019年に公式に記録されたものだけで、27件に上る。

インドの狭い路地を駆け抜ける女性
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むち打ち、レイプ、火あぶり…女性が不満のはけ口にされている

国際NGOのアクション・エイドは、魔女狩り問題を追跡している団体のひとつだ。インターン生であるリナ・ヴォルクマン氏と、コミュニケーション担当職員のシャリニ・ペルマル氏は、米外交専門誌のディプロマットに寄稿している。

記事によると魔女と烙印らくいんを押された女性は、むち打ち、レイプ、火あぶりなどの暴力を受け、そして殺害される場合がある。

ターゲットとなるのはほとんどが「集落のなかでかろうじて暮らしている女性」であり、老若や既婚・未婚を問わないという。しかし、なかでも高齢の独身女性は「子をもうけられず性的なサービスを提供することもできない」ため、家父長制が色濃い社会制度において邪魔者として扱われることが多い、と記事は指摘する。こうした女性が災厄の原因である「魔女」に仕立て上げられ、集落の不満のはけ口とされるという。

ニューヨーク・タイムズ紙は、魔女狩りは古い迷信の枠を越え、現代では女性たちを抑圧する手段としても利用されていると指摘する。作物が不作だった、井戸が涸れた、病人が出たなどの不利益が、すべて村の「魔女」のせいになっている。

冒頭の26歳女性の件でも、村の名家の男性の性的な誘いを断って以降、牛が死ぬたびに彼女の責任になっているという。

爪を剝ぎ、排泄物を食べさせ、全裸で引き回す

類似の事件は無数に起きている。インド犯罪記録局によると、2021年までの12年間で1500人以上が殺害された。被害は深刻だ。ニューヨーク・タイムズ紙は、「魔女の烙印を押された女性たちは、爪を剝がれたり、糞を食べさせられたり、裸で引き回されたり、黒や青のあざができるまで殴られたりしている」と報じている。