自民党幹部からも見直しを求める声が上がる

「マイナ保険証」の延期・廃止論は、世論調査では7割にも上り、野党はもちろん自民党からも見直しを求める声が相次いでいる。

自民党内では「国民に不満がある以上、柔軟に対応すべきだ。しばらくはマイナ保険証と現行保険証の選択制にしてもいいのではないか」と、岸田政権の強硬姿勢を問題視する声が大きくなっているところに、党三役の一人である萩生田光一政調会長が「無理に最終的なお尻の時間を切らず、理解してもらう機会を作っていく必要がある」と現行保険証の全面廃止の見直しを求め、世耕広成参院幹事長も「必ずしも来年秋という期限にこだわる必要はない」と続いた。

公明党の山口那津男代表も「政府の対応は明快さを欠いている。一本化のメリットの説明を尽くす必要がある」と苦言を呈した。

主要紙の社説は、「マイナ保険証 メンツにこだわる愚」(朝日新聞)、「健康保険証の廃止 なぜ来秋にこだわるのか」(毎日新聞)、「健康保険証廃止 『撤回』の声なぜ届かぬ」(東京新聞)、「マイナ保険証 国民の不安払拭へ対策を急げ」(読売新聞)、「マイナンバー混乱 河野氏の責任も調査せよ」(産経新聞)と、厳しい論調で一色だ。

にもかかわらず、岸田首相は、現行保険証の24年秋廃止を譲らず、わずかに保険証の代わりとなる「資格確認書」の弾力的運用でお茶を濁す弥縫策を言い出した。だが、この措置は、現行の保険証を残した場合とほとんど変わらないため、痛烈な批判が浴びせられている。

9月の内閣改造で問われる河野デジタル相の処遇

そもそもマイナンバーカードの取得は任意のはずなのに、保険証機能を持たせた「マイナ保険証」の導入で事実上義務化しようとしたことに、根本的な誤りがあった。

2万円分のポイントにつられてマイナンバーカードを取得した人は少なくなく、決して利便性が期待されてのことではない。だれも使おうとしなければ、役立たずの代物に堕してしまう。

個人情報が丸裸にされることに漠然とした不安を感じる人たちの根っこには、「政府は信用できない」という不信感があり、時の政権の都合の良いように個人情報が利用されないかという不安が拭えない。政府と国民の間に、「政府に個人情報の管理を任せてもいい」という基本的な信頼関係が築けていないことが、「マイナンバー制度」の最大の問題といえる。

河野デジタル相の「暴走力」は、国民的な反発を買い、政権を窮地に追い込んでしまった。

「マイナ保険証」に始まる大混乱は、「マイナ保険証」の全面的な方針転換で鎮めるしかない。9月にも予定される内閣改造で、河野デジタル相の処遇をどうするか、岸田首相の英断が問われている。

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