デジタル庁が立ち入り検査の対象になった

マイナンバー制度をめぐる混迷がますます深刻さを増し、岸田文雄政権を激しく揺さぶっている。報道各社が世論調査を実施するたびに、内閣支持率は下がる一方で、軒並み内閣発足以来の最低水準を記録している。

そんな中、政府の個人情報保護委員会が7月下旬、ついにデジタル庁に立ち入り検査に入った。理由は「マイナンバーを巡る情報管理に問題があった」ということで、制度を所管する官庁としての適格性が問われる前例のない“事件”である。国民全員に関わるマイナンバー制度の根幹に関わる由々しき事態と言わねばならない。

記者会見する岸田文雄首相=2023年8月4日、首相官邸
記者会見する岸田文雄首相=2023年8月4日、首相官邸

「聞く力」をウリにする岸田首相が意を決して臨んだ8月4日の記者会見では、2024年秋の保険証廃止の従来方針に固執し、延期や廃止を求める世論に応えようとはしなかった。さらに、8月8日に発表したマイナンバー不祥事の中間報告では、トラブルが拡大していることが明らかになった。

個人情報の漏洩に対する国民の不安と不信は広がるばかりで、内閣支持率が急落するのも当然だろう。

本欄では、『「マイナ保険証の義務化」にも世論は大反発…岸田政権がゴリ押しする「マイナカード」が広がらないワケ』(2022年11月3日付)と題した論考で、主務大臣の河野太郎デジタル相に期待された「突破力」が「暴走力」になりかねないことを指摘したが、現状はまさに懸念した通りになってしまった。

もはや内閣支持率の回復のためには、現行の保険証を存続させ、河野デジタル相を更迭するしかないのではないだろうか。もっとも、それは政権の大失態を自ら認めるという皮肉な話なのだが……。