盗んではいけない理由をちゃんと分かっている

私は必ず、何かしらの問題行動を通して子どもたちに出会います。

実際に盗んだ子どもたちになぜ盗みをしてはいけないのかと尋ねてみると、大抵「犯罪だから」とか、「盗られた人がかわいそうだから」という正解の回答が返ってきます。

盗んでいる本人たちは、盗んではいけない理由をちゃんと分かっているのです。このことからも分かるように、「分かっている」ことイコール「できる」ことではありません。

「スーパーは自分の冷蔵庫」と言った子ども

この子たちの盗みの対象は幅広く、スーパーでお菓子を盗むこともあれば、ドラッグストアでシャンプーや柔軟剤、ディスカウントストアでドライヤーを盗んできたこともありました。

ドライヤーには驚かされましたが、今まで私が見てきた他の子たちも、驚くようなものを盗ってくることが多々ありました。

小さいお菓子や文具から、成功していくうちに麻痺していき、何でも盗れそうな気がしてくるのですね。

「スーパーは自分の冷蔵庫」と言った子もいました。米袋やスケートボードをトレーナーの中に入れて店を出ようとして見つかった子もいます。これが、クレプトマニア(窃盗症)です。進行して深刻化していくのです。

「スーパーは自分の冷蔵庫」と言った子ども(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/Siewwy84
「スーパーは自分の冷蔵庫」と言った子ども(※写真はイメージです)

ともすれば、ショウ君たちにもそのリスクはありました。進行を防ぐためには、怒ったり叱ったりするのではなく、きちんとした治療に繋ぐことが重要です。

盗みの認知行動療法プログラムは全10回、ショウ君はほぼ休まず参加し、とりあえず全過程を終了しました。