家族の中だけで封印してしまった

ここから負の連鎖が始まります。

このことをきっかけに、お母さんとお祖父さんの仲が悪くなったそうです。

それもそのはず、お母さんからすれば、息子を殺された相手。絶対に許すことなどできないはずですが、その相手がたった一人の実の父親。そのお父さんを殺人犯にすることもできず、家族の中だけで封印してしまったのです。

それでも、お母さんとお祖父さんが喧嘩をすると、「あのことを言うよ!」という脅し文句が家の中で飛び交う。「あのこと」というのが、兄の死にまつわることなのだということも、ショウ君は薄々分かっていたのでした。

また、この子は、実際にお兄ちゃんが目の前で殴り殺されているのを見ているわけです。

その後は、少しでも行儀が悪いことをしたら自分も同じことになるかもしれないという強い恐怖心に襲われ、家にいるのが怖くてたまらなかったと言います。

虐待は、親が「今日で終わり、もうしない」など終息宣言されることはまずありません。祖父が、兄のことがあって反省して心の中で「もう折檻はしない」と誓っていたとしても、子どもには分からないので、その後もずっと恐怖の中で生活することになります。

母親が覚醒剤を打つ際に血管を探す役

お母さんが覚醒剤に走るようになったのも、この頃からだそうです。

わが子を失ったショックからなのか、その辛い現実――自分の子どもが親から殺されるという事実をごまかさずにはいられなかったのでしょう。

そして、さらなる不幸が彼を襲います。

ショウ君は母から注射する際の血管を探すのがうまいと言われ、お風呂でお母さんがクスリを打つ時に、血管を探す役が与えられていたそうです。

血管を探す役が与えられていた(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/golfcphoto
血管を探す役が与えられていた(※写真はイメージです)

お風呂にいる時は血管が出やすいからと。