カニ缶は極寒の工場で加工されている

これを水産業者が買い付けるわけですが、その際に身の割合(身入り)が非常に重要視されます。工場に買い付け担当者が検品のため張りついて、生産時期や漁獲場などをチェックしながら、なるべく身が詰まったカニを選別していくのです。

その後、カニフレークなどに加工されるものに関しては、中国や東南アジアの加工場に持ち込まれますが、カニは解凍し再凍結すると味の劣化が著しいため、半解凍の状態で作業が行われます。そのため、工場内の温度は低く保たれ、働く工員は重装備の防寒対策を強いられます。

そんな状態で彼らは1gでも多くの身を取るため、殻をペンチで挟み、ガンガン叩きながら中の身を出していくのです。さらに透明の中骨を除去するため、ほぐした身に、暗室内でブラックライトを照射して、工員がピンセットを用いて手作業で除去していきます。

需要と供給でモノの価格が決まるのは市場の常ですが、こうした人件費が原価として存在する以上、冷凍ガニや加工品に関しては今後も価格が下がっていくことはないと思われます。

「カニ離れ」がカニバブルを継続させる恐れ

一方で、直近のカニ相場よりも筆者が危惧しているのは「日本人のカニ離れ」です。

小平桃郎『回転寿司からサカナが消える日』(扶桑社新書)
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今でも「カニ食べ放題ツアー」などは旅行会社の人気商品ですが、参加者の多くは高齢者が占めています。総務省家計調査などを見ても、カニの購入数量は10年以上、減少し続けています。日本では丸茹でされたものを自分でむいて食べるというのが一般的ですが、これも原因でしょう。高いうえに、殻をいちいちむかないといけません。可処分所得が減っている中年以下の世代にとって、高価で面倒なカニは敬遠されるのは目に見えています。

一方で、風味かまぼこ(カニかま)市場が拡大しているのは、皮肉としか言いようがありません。チェーン系回転寿司店でも、何年も前からカニかまが定番メニューとなっています。

カニ離れが加速すれば、「規模の経済」が成立しなくなり、日本におけるカニの価格はさらに上昇していく可能性もあるのです。

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