「カニバブル」はいつまで続くのか

そして迎えた2022年の年末カニ商戦。12月に入ると、スーパーや百貨店では販売合戦が繰り広げられました。しかし、折からの高値のため計画より販売ペースが遅く、一部の売り場では在庫軽減のため特価での販売を始めました。しかし、末端販売価格にうまく反映できず、販売数量を伸ばすことができた店舗は少なかったようです。

これには昨今の人手不足もあるかもしれません。現場が混乱してしまうことの危惧や、地方発送などの運送便の便数の減少などにより、現場が急な売価変更を避けたという話もあります。

ただ一方で「カニバブルの崩壊は近い」と見る向きもあります。根拠のひとつは、国際カニ相場を押し上げてきたアメリカの景気減速やインフレ加速による購買量の低下です。高くなりすぎたカニの在庫がだぶつき始めているというのです。

ロシア産カニの輸入単価は下落傾向

加えて、アメリカが行ったウクライナ侵攻に伴うロシア産の禁輸措置により、本来、アメリカに行くはずだったカニが他の国へ流れているのです。

水産業界紙『みなと新聞』(2022年10月12日付)は、「1~8月における冷凍ズワイの輸入量は前年同期比17%増の1万846t。うちロシアからは77%増の7095t」と報じ、ロシア産の輸入単価が8月は前年同月比25%安となる、キロ当たり2738円に下落したとレポートしています。ロシア産水産物については、政府は日本の地域経済を守るため、ウクライナ侵攻後も禁輸措置を発動していません。

ウクライナ侵攻をきっかけとした、水産業界に関連する対ロシア政策の変更点としては、ロシア産カニ(活・冷凍)の関税が4%から6%に引き上げられたことくらいでしょう。これは、G7各国が協調して、ロシアを最恵国待遇から除外する措置をとった結果、ロシア産水産物の関税がWTOの協定税率から一般税率に変更されたことによるものです。

カニ流通は他の水産流通と比べてかなり特殊で、小売価格の動向は見通しを立てにくいという事情があります。