私たちの社員の数が少なすぎて、学生一人ひとりとあまり接触ができず、どの人がいいかを見抜くまでに、ほかに取られてしまったのだ。自分たちの実力以上に動員していたせいで、1万人を集めるのに費用も5000人のときの3倍から4倍かかった。

同時に、顧客やマーケットに対してブランド力を高めるにはどうするかを考えた。そのために、オフィスに投資をしたし、社員旅行にもいった。社内にバーやカフェをつくったのも、ほかの人からみればただの消費かもしれないが、自分では投資のつもりだった。

ワインセラーもつくったし、パティシエが焼いたケーキを社内で配ったこともあった。それで社員のモチベーションがあがれば、安い投資だと思っていた。

バーは雑誌などメディアでもずいぶん紹介され、いまでは社内バーをつくる会社も出てきた。それでも、つくっても5席くらいのものだろう。私がいた当時、リクルートにも同じように社内バーのようなものがあった。ところが私たちの場合、4つあるフロアのうち半分がバーとカフェだった。

いま思えば、そのときは人気企業ランキングの1位になることが悲願だったのだ。けっきょくリクルートの就職人気ランキングで、私たちがランクされた最高位は17位だった。

03年頃からは、私たちがつきあう顧客も、それまでとは変わってきていた。以前は同じ中小企業でも、採用したくても人がこなくて困っているというのが、顧客の大多数だった。

ところが、せっかく採用をやるのなら、もっと違うやり方があるのではないか、費用はかかってもいいから、事業拡大のためにこれまでにないやり方をしてみてはどうかという顧客が出ていた。たとえば、当時はまだ目新しかったレストランウエディング事業の会社などだ。

(大内祐子(プレジデント編集部)=構成 佐粧俊之=撮影)