住宅や保険のような「大きな買い物」で損しないためには、どうすればいいか。米国公認会計士の午堂登紀雄さんは「モノやサービスのコスト構造、あるいは流通の仕組みを知るといい。その知識があれば、価値に対して割高な商品を見抜くことができる」という――。

※本稿は、午堂登紀雄『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

不動産業者と若いカップルが新しい家を訪問
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「借金は悪」と決めつけると損をする

マネーの専門家の中には、「借金は悪」と言って、「お金が貯まったら住宅ローンを繰り上げ返済しなさい」と主張する人がいます。

もし、あなたが、たとえば貯まった何百万円かを住宅ローンの繰り上げ返済にあてようと考えているなら、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。

住宅ローン元本の返済は、繰り上げ返済する・しないに関係なく一定ですから、繰り上げ返済で節約できるのは、金利分です。そこでの判断基準は、住宅ローンの金利よりも、高い利回りで運用できるかどうかです。

住宅ローンの金利が3%だとして、もし自分が年利3%超で運用できるのであれば、資金を繰り上げ返済に回すより、運用したほうがトクになります。逆に、3%超の利回りを得られる自信がない場合は、繰り上げ返済をしたほうがトクということです。

住宅ローンの繰り上げ返済は、毎月の返済額を減らすほうではなく、返済期間を短縮するほうで繰り上げするほうが全体の金利コスト削減効果が大きくなります。

自動車などの高額品を買うときも同じです。たとえば200万円の車を、全額キャッシュで買うか、オートローンを組んで買うかは、運用利回りと比較して決めます。キャッシュで買えば、ローンはありませんから支出は200万円です。

仮に自己資金を使わず全額ローンで買い、オートローン金利が3.5%、5年返済という条件の場合、金利支払額は5年間で18万3000円。

その200万円で配当利回り7%の株式を買えば5年間で受け取れる配当額は42万円。オートローンの金利を差し引いても23万7000円も儲かる。むろん株価は上下しますし配当も変動しますから確実というわけではありませんが、キャッシュで車を買うよりチャンスは増えるでしょう。

これは、良い悪いを論じているのではありません。自分のお金をどういうセクターに投入すれば、最も資金効率が高まるかを考えてお金を使う、という選択の問題なのです。