演劇でのお金は、普通のお金以上に大切

――ところで、ねえ、前に演劇の公演に誘ってくれたじゃん。手口って言うと悪いイメージだけど、誘い方がうまいというか、知らず知らずのうちに『チケット買うよ』と言わされていた自分がいたわけよ。

「別に騙そうなんて思ってないんだよね。ただ、自分が頑張るから、好きな友達とかお世話になってる人には、ちょっと悪いけど本心から見てほしいと思って誘うんだよね。チケットバックもあるんだけど、お金が欲しいとかはない。演劇で得たお金は大切に取ってある。演劇でのお金は、普通のお金以上に大切なものだから」

――売春で得るカネとは違うわけだ。

「なに言ってんの。重みが違うよ」

「妊娠したって言って、友達と客との3人で会う」

――思ったんだけど、その会話術は裏引きとかにも生かされてるの?

「うん。私、詐欺師だからね」

琴音は、これはあまり言いたくない、といった様子で苦笑いした。だが、すぐにネタになるなら教えてあげたい、といった思いになってくれたようで、「けっこうゲスいよ。犯罪だよ」と前置きして明かした。

「妊娠したって言って、友達と客との3人で会う。そこで泣き落としする。男ってさあ、女ふたりで来られて泣かれると対処できないし、かつコッチは冷静でいられる。だからコッチは女ふたりがマストで、50~100万もらって、その友達と折半する」

――でも、最初は向こうも信じないよね。

「別の友達がガチで妊娠してて、その子の検査薬を借りて私が妊娠したことにして。ま、そうして周到に用意はしているけど、実際に『検査薬見せろ』って言う人はいないんだよね」