末期の販売比率はヴェルファイアが5%以下だった

もう一つ、今回のフルモデルチェンジで気になるのは新キャラクター戦略です。というか正確にはリバイバル戦略でもあります。それは吉岡エンジニアの言うところの「ヴェルファイアの復権」。

冒頭でも言ったように当初アルファード&ヴェルファイアがライバルに勝った背景には、他にない2キャラクター戦略がありました。

前者が正統派、後者がワイルド派と選べる楽しさ。ここにはかつてのトヨタのマルチ販売チャンネル対策もあったようですが、結果的に成功しました。特にヴェルファイアは一時ユーザーの3割が30代以下という驚異的なヤング比率。

しかし知る人ぞ知る事実ですが、現行モデルでアルファードは小沢が勝手に言う「鋼鉄腹筋グリル」を採用。このワイルドマスク路線は見事に当たり、同時に2020年のトヨタ全店全車種併売戦略もあって、イッキにアルファードへ人気が集中。

末期の販売比率はアルファードが90%以上で、ヴェルファイアは5%を切ったといいます。結果、当時の車種整理の動きもあり、一時は社内でもヴェルファイア撤退案も出たそうです。

当時私は関係者からこんな話を聞きました。

「小沢さん、知ってます? ウワサじゃあのマツコ・デラックスさんがアドバイザーもしてるって。今回ヴェルファイアがなくならなかったのはマツコさんの一言も大きいらしいですよ」

一部の若者に熱狂的に支持されているブランド

この話がどこまで本当かは定かではありませんが、ヤング客を独特の個性でつかんでいたのは事実です。

長らく若者のクルマ離れが叫ばれる中では傑出した人気であり、しかも平均購入価格400万円を超える。これほど若い客が熱狂的に大枚をはたくブランドはそうは作れません。そうしたユーザー重視の姿勢が動いたのでしょう。撤退案は退けられ、「ヴェルファイア復権」が決まりました。

今回、ヴェルファイアの顔はかつてないスッキリしたワイルドさになりましたが、それ以外の特色を与えました。それは専用の走り味です。

より個性が増したヴェルファイア
画像=トヨタ自動車提供
より個性が増したヴェルファイア

新型アルファード&ヴェルファイアは2.5リッターガソリンと2.5リッターハイブリッド、2.4リッターターボの3種のパワートレインが選べるのですが、中でもパワフルな279psの2.4リッターターボはヴェルファイアでしか選べません。

加えヴェルファイアのみ専用ボディ補強パーツのフロントパフォーマンスブレースが入り、現状全グレード19インチタイヤ&ホイールで、硬めの専用サスペンションも採用されています。やんちゃな心をくすぐる見た目に加え、乗り味までスポーツに特化したグレードへと進化したのです。