メーカー側がPB企画を持ち込む

かつてのPBには「安いけれどまずい、質が悪い」というイメージがつきまとっていた。筆者も以前、ある小売りチェーンが出しているPBのコーラを飲み、その奇天烈な味にたじろいだ経験がある。しかし今回、いくつかのPB商品を実際に口にしてみたが、その多くは、私見ながらNBと互角に渡り合えるほどの出来ばえだった。消費者の節約志向に応えたPBは、クオリティにおいてもNBの存続を脅かす存在へと育っている。大手食品メーカーの営業担当者は漏らす。

「我々にとっては、当然NBのほうが利益率は高いですよ。ただ、儲からないPBでも手がければ、その小売りとの“会話”が増えてパイプが太くなる。だから無視できないんです」
 図3(【1】に掲載)のように、メーカーの利益はNBの22.8円からPBではわずか3.85円と大幅に圧縮されている。

「これはまだいいほうで、販売価格178円の袋麺(5食入り)で利益が1~2円程度というものもある。小麦価格が上がっても据え置きの場合、原料値上げ分をメーカーが負担していることも」とメーカー関係者は話す。

それでもメーカーには、PBの生産を受注するメリットがある。それは、NBの5倍、10倍という大量注文を受けることで売り上げを確実に増やせること。大量生産により、生産ラインを効率的に動かせ、工場の運営コストも下げられる。小麦、大豆などの高騰による値上げで消費者が離れ、売り上げを落としたNBは多い。その穴埋めをPBで行っているメーカーも少なくないといわれる。

トップバリュ売り上げと売り上げ構成比
グラフを拡大
トップバリュ売り上げと売り上げ構成比

「イオンが売り上げの2割を『トップバリュ』商品にすると宣言したことで、危機感を強めたメーカーは多い」と、群馬県前橋市に本社を置き、北関東を中心にGMS、ホームセンターなどを展開するベイシアの食品本部長神戸達也氏は言う。

「ジャスコ単体でも売り上げ2兆円です。うち2割の4000億円が『トップバリュ』になると言われたら、メーカーさんは手を出さないわけにはいかない。『うちはやりません』などと言ったら、おそらく(自社製品が)売り場から消されてしまう」(神戸氏)