女優・広末涼子さんと有名シェフ・鳥羽周作さんのW不倫が国民的関心事になっている。作家の岩井志麻子さんは「私は不倫に興味はないのだが、広末さんの欲深さには感心した。女優として成功したのも頷ける」という――。

広末涼子の不倫報道で私が思い出した「蛇女優」

かつて、蛇女優と呼ばれた女がいた。彼女、I子は昭和8年の生まれなので、存命ならば今年90歳になる。たぶん、もう蛇女優の面影はない。

開幕した第35回東京国際映画祭のレッドカーペットに登場した映画「あちらにいる鬼」の広末涼子さん=2022年10月24日、東京都千代田区の東京ミッドタウン日比谷前
開幕した第35回東京国際映画祭のレッドカーペットに登場した映画「あちらにいる鬼」の広末涼子さん=2022年10月24日、東京都千代田区の東京ミッドタウン日比谷前

先日、広末涼子のW不倫が煽情的に報道されたとき、なぜか私はI子を思い出していた。女優であること、不倫をしていたこと、それしか共通点はない。ましてや、不倫の結末など決して一緒に語ってはいけないのに。

共通点の一つである女優という仕事についても、2人はかけ離れている。広末さんはごく普通の女の子から、一気に国民的アイドルに駆け上がった。スキャンダルはあったものの、それも魅力に加算され、永遠の清純派スターになった。

I子は若い頃から地元で無理矢理に反社会的組織の親分の愛人をさせられ、背水の陣で家出して芸能事務所に入り、24歳で遅咲きのデビューをする。グラマラスな肉体美も武器だったが、蛇を可愛がっているという際物ぶりも売り物にさせられた。

広末さんは何があっても何歳になっても透明感という形容を冠せられたが、I子の肉体美は最初から透明感とは無縁で、演技とともに円熟していくとも讃えられなかった。

愛人を包丁で殺す

女優になってしばらくして、同業者との間に未婚のまま子を産むが、その子はすぐ相手方に取られて別れた。広末さんは子持ちで離婚した後も、熱烈に望まれて再婚したのに。

I子は早くに女優としての限界を感じ、引退しての結婚を望んだ。広末さんはますます女優として輝き続け、家庭を持っても奔放であり続けた。そしてI子は、7年も交際し子どもまで産んだ興行師の男を刺殺した。

彼は妻子だけでなく多くの愛人もいたが、I子は結婚が無理ならせめて認知をと迫った。その争いはずっと蒸し返されていたが、その日のI子は包丁を用意するほど必死になっていた。しかし彼は例によってあっさり断った上に、お前もそろそろ次の男を見つけろ、などと言い放つ。

そこでI子は、包丁を取り出してしまったのだ。救急車で搬送されていくとき、彼は必死に救急隊員に訴えた。これは自分で自分を刺してしまったのだと。もちろんそんな嘘は通らないし、彼は間もなく絶命した。