時代は走りよりも豪華さを求めるように

絶好調だったオデッセイが苦境に立たされたのは、2008年に発売した4代目からだ。低全高ミニバンとして人気を博したこれまでのオデッセイの特徴を受け継ぎつつ、走りにも磨きをかけた。

だが、既にミニバンの低床化が常識となり、オデッセイが属する上級ミニバン市場ではトヨタの2代目「アルファード」(2008年発売)に代表される室内の高さと広さにゆとりがあり内外装も豪華なモデルが人気となっていた。

さらに、狭い場所でも安心してドアの開閉が出来るスライドドアのニーズが高まっていたが、オデッセイは未装備。徐々に窮地に立たされていった。

そこで2013年登場の5代目は、全高を高めつつさらなる低床化を図った。その結果、他モデルよりも室内高を拡大しつつも全高は抑えた。もちろん、オデッセイの強みである低重心も維持している。シリーズ初となる後席スライドドアの採用やハイブリッド車を用意することで、時代のニーズに応えようとした。

しかし、客が上級ミニバンに求めていたのは上質さや豪華さだった。ホンダ車らしい走りの良さを訴えるスポーティーなスタイルが逆に仇となり、販売は芳しくなかった。上級ミニバンはアルファードとヴェルファイアの2強時代に突入する。

決して5代目が失敗したわけではない

ホンダも手をこまねいていたわけではない。

2020年11月に行ったマイナーチェンジでは、大胆なフロントマスクの変更を断行。それまでのオデッセイとは異なる重厚感ある顔付きとなった。

6AA-RC4型ホンダ・オデッセイe:HEV ABSOLUTE EX(写真=Tokumeigakarinoaoshima/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons)
6AA-RC4型ホンダ・オデッセイe:HEV ABSOLUTE EX(写真=Tokumeigakarinoaoshima/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons

これがホンダファンから支持され、販売台数は急回復した。2019年が1万4614台、2020年が9715台だったのに対して、2021年は2万1148台まで巻き返しを図った。

それだけに、2021年12月の国内製造終了は関係者にとって無念だったに違いない。事実、国内販売が不調だった先代となる4代目が7万1184台だったのに対して、現行型である5代目は、販売開始から国内販売終了時点の合算で、17万8327台まで回復させている。