個性は基礎仕事力の上に花開く

今やすっかり働き者のような顔をしていますが、少女時代の私は母から、

「あなたみたいな怠け者は死んでいるのと同じ」

とまで言われたほど、ぐうたらな人間でした。そんな私を社会で最初に鍛えてくれたのは、若い頃に私を雇って働かせてくれた会社や仕事だと思っています。自分を鍛錬する力や向上心を植えつけてくれました。

ほんの2~3年でもいいので、どこかに勤める、もしくは所属して働くという経験は、確実に人を育ててくれると思います。最近はライターが人気職業だそうですが、最初から完全なるフリーランスを目指すというのは、人間の成長という意味では危なっかしく感じます。

この年になっても私は、大昔に勤めていた小さな広告代理店でのことを夜中に思い出しては、「ああ、恥ずかしい」と冷や汗が出てくることがあります。よくぞあんなダメ人間を会社は置いてくれていたなあと感謝するしかないのですが、それがわかるほどには成長したのでしょう。

自分がやるべきことを教えられ、それに真面目に取り組まなければ物事は進んでいかない。毎日毎日が修業のような勤め仕事をして身につけた基礎仕事力は、その後の人生の中でも、とても大きなり所となります。作家でも、会社員の経験がある人はとても多い。個性とは、基礎仕事力の上に花開く能力でもあるからです。

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写真=iStock.com/carloscastilla
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仕事は人間力を鍛えてくれる

また、仕事をするということは、いやなことがあっても耐え、自分を抑え、たとえ大嫌いな人とも折り合っていかなければならないということ。理不尽なことだっていっぱいある。だからこそ何よりも人を成長させ、人間力を鍛えてくれるのは、仕事なんです。

よく「子育てで、自分が成長した」という人がいますが、その言い方が私は大嫌いです。よっぽどの例外を除いて、親は子どもを愛しているし、子どもは親を愛してくれる。そんな相思相愛の関係で自分が成長したというのは少し恥ずかしいことだと思います。

たしかに、子育てというものは、自分がせいいっぱい愛している相手が、自分をどんどん裏切っていく驚きの連続でもある。時折、悲しくなったり、無力感も感じるけれど、それもまたいろいろなことを教えてくれる。子育てでの挫折や苦労は結局、家族の内輪話でしかありません。

逆に、仕事をしている人は「自分は真面目に働いているんだ」という事実に、無条件にもっと自信を持っていい。私は心からそう思います。