若者の「日本離れ」と表裏一体

今回は「なぜ日本のZ世代は『韓国化』しているのか」を、韓国発のトレンドから見ていきました。別の見方をすれば、日本から若者トレンドが生まれなくなったと言えるでしょう。

日本は、バブル崩壊以降、経済が低迷し続けています。2023年の今も、お金を持っているのは中高年。よって、日本企業にとっての顧客ターゲットは中高年であって、若者ではありません。これでは、日本発の若者トレンドは生まれようもありません。

韓国は違います。僕はつい先日、韓国に1週間、調査に行ってきました。ソウルには、2021年にオープンした大型商業施設「ザ・現代ソウル(THE HYUNDAI SEOUL)」や、江南(カンナム)エリアなど、「MZ世代(ミレニアル世代とZ世代を合わせた20~30代の若者)」がターゲットのおしゃれスポットがたくさんあります。

韓国も少子高齢化社会で、若い人が少ないのは日本と同じです。しかし、韓国は、経済が上向きで、若い世代のほうが所得もエネルギーもある。だから、企業は多少のリスクを背負ってでも、若者向けの攻めた投資ができるわけです。

韓国=トレンドの最先端、日本=レトロという新しい構図に

一方で、韓国のZ世代も日本の影響を受けていることは事実です。先日、釜山で10~20代の韓国人にインタビューをしてきました。そこで感じたのは、韓国の若者はみんな日本のアニメと漫画が大好き。日本への旅行も大定番だということです。今や日韓のZ世代は、同じカルチャーとトレンドを共有しています。その意味では“日韓融合”と言えるかもしれません。

しかし、韓国のZ世代が「日本化」しているかといえば、それは少し違います。

彼らは日本を「レトロな国」を見なし、懐かしさや親しみを感じています。例えば、大都会の東京に残る古い街並み。ご飯がおいしく、人も優しい、懐の深さ。異常な受験戦争もなく、熾烈しれつな就職戦争もなく、激しい貧富の差のない日本――。韓国の若者にとって日本は心のオアシスであり、「最先端トレンド」とはかけ離れた「レトロな国」なのです。

日本が世界に誇れる若者向けコンテンツは、アニメと漫画です。若者トレンドという分野では、日本は韓国に完敗しているのが現状です。

「NiziU(ニジュー)」や「IVE」といった韓国アイドルユニットには日本人メンバーが加入しています。韓国のフォーマットで、もちろん歌、ダンスもすべて韓国式です。本音を言えば、これが「日本の敗北」を端的に示していると感じます。もちろん若者トレンドの分野に限ったお話です。

僕のような昭和世代は複雑な気持ちになるかもしれませんが、「Z世代の韓国化」は今も進行中です。日本からもう一度、自分の国の若者をときめかせるコンテンツ、グッズが生まれてほしい。韓国や中国、世界中の若者をときめかせてほしい――。僕はそう願っています。

(構成=奥地維也)
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