世界一健康寿命が長いのは男女ともに日本人

日本人は健康に悪い生活を強いられているというデマを信じている人たちは、よく次のように言います。「確かに日本人の平均寿命は長いが、それは寝たきり老人を無理やり生かしておくからであって、健康寿命は短いのだ」。

ところが多くの人がインターネットを使える現代では、「日本人の健康寿命は短い」といった説はすぐに検証可能です。健康寿命とは、病気やケガがなく健康に過ごせる期間のこと。いくつか算出方法がありますが、国際比較をするときにはWHO(世界保健機関)による数字を使うのが一般的です。そこで利用可能ななかで最新の2019年のデータから、世界における健康寿命ランキングの表を作成してみました(※4)

【図表1】世界の健康寿命ランキング(2019年、WHO)

健康寿命ランキングの1位は、男性でも女性でも、両方を合わせても日本です。上位国の差はわずかですから細かい順位の違いは重要ではありませんが、日本人はただ寿命が長いだけでなく、健康に過ごせる期間も世界トップレベルに長いことは間違いありません。

※4 WHO「Healthy life expectancy(HALE)

平均寿命と健康寿命の差の「不健康期間」

どうにかして日本人の健康状態、ひいては日本の医療や農業、食事などをおとしめたい人たちの最後のよりどころは、平均寿命と健康寿命の差、つまり「不健康期間」です。「日本の健康寿命と平均寿命の差は、世界で最も大きい。つまり、日本人は寿命が長いだけで不健康だ」という主張をすることがあります。でも、やはりこれもデマです。

2019年の不健康期間は、日本人男性で8.9年間、日本人女性で11.4年間、日本人の男女合計では10.2年間です。長いと思う人もいるかもしれませんが、先進国の間では平均的な数字であり、世界一ではありません。不健康期間が長い順にランキングを作ってみました。不健康期間は短いほうがいいので、ワーストランキングですね。

【図表2】世界の不健康期間ワーストランキング(2019年、WHO)

不健康期間ワーストランキングでは日本は上位には入らず、だいたい40位程度です。僅差なので細かい順位は重要ではありませんが「日本の健康寿命と平均寿命の差は、世界で最も大きい」という主張が何の根拠もないデマであることを示すには十分でしょう。

ちなみに不健康期間が短い国は、平均寿命も健康寿命も短いのです。不健康期間が5年間と短くても、平均寿命60歳、健康寿命が55歳というのではよくありません。平均寿命が長い国ほど、不健康期間も長くなりがちです(※5)。この傾向から考えると、平均寿命が1位の日本の不健康期間は世界ワースト1位であってもおかしくないはずなのに、実際には40位くらいなので、かなり優秀であると私は考えます。

※5 「平均寿命と健康寿命の差の要因に関する国際比較研究」CiNii Research