チケット代が大幅に引き上げられて客離れが起きた

すでに映画界では「事実上、新作の製作が中断された状態」という言葉も出ている。筆者の知人の映画関係者は「2025年には韓国映画が映画館で観られなくなる可能性がある」と嘆く。

「韓国では毎年70作あまりの商業映画が製作されてきたが、コロナ禍以後は縮小し、今年はせいぜい20本程度になる見通しだ。その中でも製作費が30億ウォンを超える中規模~大作映画は10本にも満たないとみられる。映画1本の企画から上映までにかかる期間は通常2~3年なので、今のような製作の“日照り”現象が続けば2025年には映画館から自国作品が姿を消すことになるかもしれない」

韓国映画の低迷理由として最もよく挙げられるのは、OTT(Over The Top/オンライン動画配信サービス)の普及と鑑賞料金引き上げ問題だ。新型コロナウイルス感染症によって映画館を訪れることができなかった3年間、OTTが急激に普及したおかげで映画を家で観る習慣が定着した。他方で、映画館はコロナによる不況が長引くと、チケット代を36%も引き上げてしまった。かつては大人1人で1万1000ウォン(約1100円)だったのが今では1万5000ウォン(1500円)。結果、観客はさらに厳しい目で映画館で観る映画を選ぶようになり、興行不振が続いているという分析だ。

観客がいない映画館の客席
写真=iStock.com/yanggiri
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『パラサイト』ポン・ジュノ監督の新作はハリウッド映画

OTT市場が映画界に入ってくるはずだった資金や人材まで吸収していることも、窮状につながっている。これまでは映画に投資していた大手配給会社が、OTTのシリーズものなどのドラマコンテンツへの投資に旋回したケースはもはや珍しくもない。これに合わせて、著名な監督や俳優もOTTに進出したり、ハリウッドに進出したりしている。

今年のカンヌ国際映画祭で、韓国作品はただ1本もコンペティション部門にノミネートされなかった。一方、『パラサイト 半地下の家族』(2019年)でパルムドールを受賞したポン・ジュノ監督は現在、ハリウッド俳優ロバート・パティンソンと映画『ミッキー17』を撮影中だ。『別れる決心』(2022年)で監督賞を受賞したパク・チャヌク監督は、ロバート・ダウニー・Jr主演のHBOオリジナルシリーズ『シンパサイザー』に取り掛かっている。『怪しい彼女』(2014年)、『天命の城』(2017年)などでヒットメーカーになったファン・ドンヒョク監督は、Netflixのオリジナルシリーズ『イカゲーム』が大ヒットした後、続編に集中している。