「新知性ブランド」が示す新しい資本主義

私が注目するのは、彼らの強さが単に技術力やマーケティングの成功によるものではないという点だ。これらの企業は、格差を拡大し環境を破壊する資本主義の限界に挑む、いわば「オルタナティブ」のアイコンとして共感を広げている。

彼らが掲げるミッションは、必ずしも従来の資本主義の原則に当てはまらない。しかし、こうした企業が資本主義市場で勝利することで、やっかいな資本主義と環境保全、あるいは経済成長と格差是正の両立が進み、新しい資本主義の姿をつくるのに貢献するのではないか。

私はこうした先端企業のブランドを「新知性ブランド」と呼んでいる。「新知性」とは、従来の「知性」に変わる新しい知性である。かつての知性とは、18世紀末に生まれた啓蒙けいもう思想である。啓蒙思想は、近代社会の基礎となる資本主義や民主主義を生んだ。社会は確立した個人から構成され、各人が自律的に考え、人も企業も健全に競争・協力し、それで社会は進歩するという考え方である。

【図表1】「新知性ブランド」は、近代国家モデルや資本主義に対峙する
図表=筆者作成

これからのブランドに求められる4つのコンセプト

だが現実には、啓蒙思想のもとで生まれた資本主義のもとで格差は拡大し、民主主義はポピュリズムと化した。私は「新知性ブランド」が掲げるミッションこそ、18世紀末の啓蒙思想の限界を乗り越える積極的なアンチテーゼだと考えている。

かつて資本主義の限界を超えるべく生まれたのは共産主義だった。しかし失敗をしたし暗い。かたや新知性ブランドは明るい。資本主義の限界を打破する新知性を社会に育むためには、すてきな価値観をミッションに掲げる新知性ブランド企業を育てればよい――となり、もしかしたら、ここから革命的ブランド論が誕生するかもしれない。

さて、これらブランドが求める「新知性」とは、どういうものか。私は、新知性とは東洋哲学の一連の思想、つまり「共生」「主客未分」「ホーリズム」「対話」という4つのコンセプトを基軸にできていると考える。