不確実なのは金融情勢

金融の実情はなかなか一般の方には分かりにくい上に、どんなに健全な銀行でも、急激に預金が引き出されるようなことがあれば、破綻のリスクは一気に高まります。

今回は、シリコンバレーバンクの破綻に始まり、それが他の中堅行の破綻へと続いています。それに対して、米金融当局は、FDIC(連邦預金保険公社)による預金保護を通常の25万ドルから全額に引き上げるとともに、JPモルガン・チェースのような大手行に破綻銀行の業務を引き継がせることにより、今のところ、何とか破綻の連鎖、つまり金融危機を回避している状況です。

ただ、金融危機は欧州に飛び火し、スイス大手のクレディスイスが破綻、同じく大手のUBSが救済合併をするというように、思わぬところに危機が飛び火することはご存じの通りです。日本にも飛び火しないという保証はどこにもありません。

こうした中、米国の銀行の融資姿勢が厳格化しているのが明らかになりました。

とくに破綻が相次いでいる中堅銀行では、預金流出懸念や景気の先行きに対する不安などがあり、融資姿勢が厳格化し始めているということです。その中で、商業不動産に対する融資姿勢はとくに厳しくなっています。

沈んでいく銀行と、SOSのプラカードを掲げる人たち
イラスト=iStock.com/Trifonenko
※写真はイメージです

実際の引き締めの影響が出てくるにはもうしばらく時間がかかると考えられますが、米国経済の先行きに対する不透明感はぬぐえません。また、経済の先行き不透明感が企業側の借り入れ意欲を減退させているということもあります。

実際の借り入れが大きく縮小すると、米国経済も縮小をまぬかれず、日本経済にも少なからぬ影響が出ることが懸念されます。

こうした中、中央銀行であるFRBは先に述べたように政策金利を最近0.25%上昇させましたが、これまで述べたような不透明感が増す中、今回で利上げを終えるとの見方も広がっています。

いずれにしても、激しいインフレの先がようやく見えた状況ですが、金融危機の懸念をなかなか払拭することができていません。いずれにしても不安定な状況がしばらくは続くと考えられます。注意が必要です。

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