日本と欧州では育成手法がまるで違う

これについては、小学生から改善していかなくてはいけないと池上は考えている。例えば欧州の子どもたちは、相手とぶつからないようプレーする。コーチからも「(相手に)押し負けるな」「コンタクトで負けるな」といった声が一切出てこない。

なぜなら、幼児のころから「どこでボールをもらうといいか」を認知できるトレーニングが施されるため、相手から離れてボールを受けることが身についている。日本の子どものようにボールを奪いに来る相手を体で押さえてコントロールするのではなく、フリーな状況でパスを受ける。守備をする側は、攻撃をしてくる相手のパスカットを狙ううえ、相手に体をぶつけるようにしてボールを奪いに来ることもしない。つまり「トレーニング全体にボディーコンタクトがないのです」と池上は説明する。

そうなるのは、育成する順番が日本と違うからだ。欧州の育成を池上は「認知→判断→行動(プレー)」の流れだと言う。具体的には以下のようなものだ。

自分がボール保持者だとしたら、味方がどこにいるか把握する。2対1と数的優位の状況で、自分がドリブルでゴールに向かうべきか、味方にパスしたほうが得点の可能性が高いのか。守備をする相手選手の位置によって、いつパスをしたほうがいいのか。そのような「認知する力」を幼児から小学校低学年までの間に養う。

チームプレーの役に立たない練習ばかりしている

つまり、どこにスペースがあるのか、誰に渡せばチャンスになるのか。そこを見極めたら、判断してプレーする。プレーはスキル、技術を指す。せっかくいい認知をし判断したのに、最後のプレーの段階でトラップミスをすれば、子どもは「チャンスだったのに」と悔しがる。足元の技術を高めようと意識し、自ら練習する。そうやってサッカーを自分のものにしていく。

グラウンドでリフティングする少年
写真=iStock.com/Michael Blann
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ところが、日本の子どもたちはこれを逆にした順番で指導されている。行動(プレー)→判断→認知の順番で教えられているのだ。サッカーに出会ったら、まずインサイドキックを教わる。コーンドリブルをし、リフティングも目標回数を与えられ、長い期間をクローズドスキルに費やす。その後、小学3~4年生になると突然こう言われる。

「蹴るだけじゃだめ」
「まわりをみて」
「スペースを探して」
「ボールをもらえる位置に動いて」

そう言われても、何もベースを教わっていない子どもたちは困ってしまうのだ。子どもたちが「認知→判断」をスムーズにできるよう、池上はオシムがやっていた多色ビブスのトレーニングをやらせる。

選手に4色か5色のビブスをつけさせる。最初は2タッチでプレー、自分と同じ色のビブスの人にはパスできない、などのルールを告げる。慣れてきたら、もらった人にはリターンパスができないといった制限をつける。選手はリターンパスができると楽だからだ。