「自分の子供に不適切な対応をする可能性が高い」

町田さんは現在、「子どもがほしい」とは思っているが、自分が「子どもにとって不適切な対応をする可能性が高い」ことも承知している。

「私は、『安心できる家庭』で育つことができなかったからこそ常に学び続け、柔軟性を失わず、信頼できる相談先を持っておくことの大切さを知っていますし、すでに“洗脳”されている私が、“毒親の連鎖”を絶つのは、自分1人の力では難しいと思っています。だからこそ、両親は何かあるとすぐに子どもである私を頼る人でしたが、私は夫とチームを組んで子育てに挑みたいと思っています」

町田さんの両親は、町田さんが家を出た途端に別居し、その後、離婚した。子どもなしでは家庭を維持できなかったからだ。子どもを“かすがい”にしないこと。子どもがいてもいなくても夫婦として機能することが重要だ。

現在、町田さんは、

・自分の感情を自分で受け入れること
・自分の感情を相手のせいにしないこと
・自分が嫌なら離れる、好きなら一緒にいる
・「愛情」「あなたのために」といって自分を傷つけてくる人からは距離を取ること
・自分の選択や意思を大切にすると同時に、相手の選択や意思も尊重すること
・家族であっても子どもであっても別の人間。違いを楽しむ心を持つこと

を肝に銘じながら生きている。

「『自分で自分のことを大切にする』そう決めて、『親しき仲にも礼儀あり』『相手と自分は別の個体』と理解して言動すること。それが、自分が“毒親”にならないための方法かなと思います」

狭い廊下に座り込み、指をさして子を叱る母親
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです

筆者は最後に、「両親に介護が必要になったらどうするか?」と町田さんに質問してみた。

「私は一人っ子なので、親の介護はとても大きな悩みの種でした。『介護は子育ての通信簿』と言われますが、もし私が両親を介護したら、自分が子どもの頃にされていた通りにしてしまうと思います。職場のケアマネさんにも相談しましたが、事情があれば、直接介護をしない方法もあるそうです。介護や生活に関わることを一通り請け負ってくれる民間のサービスがあることも分かりました。私は社会保障やセーフティーネットを利用して、自分は介入しないつもりです」

「私は子どもができても、『親』ではなく、一緒にいて心が温かくなるような『人』になりたい」と話す町田さん。それは、子どもと自分が“対等でありたい”という気持ちの現われだろう。人は、子どもができて初めて親になる。子どもとともに成長していくものなのだ。

毒親と連絡を絶っている子どもは少なくないが、分籍までしている人は多くはない。だが、さほど費用もかからず、手続きも難しくないため、親との共依存関係に悩まされているなら、自分の人生を生きるための選択肢になるかもしれない。

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