住み続けることがリスクになる

借地期間終了までに建物を解体し、更地にして地主に返す義務は厄介だ。

借地期間終了間際になって居住者が減ってくるような事態になったら、修繕費用の積立が予定通りいかなくなる恐れがある。面倒だからといって退去してしまう住民が相次いだらどうなるのか、まだ誰にもわからない。法的には管理組合に請求権があるが、最終的に司法的手段が必要な状況にまでなったら未払い金の回収は容易ではない。

また、借地権が50年だったとしてもその時点で更地にして土地を返還するのだから、管理組合がそれに間に合うように住民の退去時期を決めなければならないし、建物を取り壊すための決定やスケジュール管理をしなければならない。

借地期間終了時には管理組合の相当の手間が予想される。その時に組合理事のなり手がいるかも不透明だ。

そこで、建物を地主に無償譲渡する形で土地を返す「建物付き敷地返還」スキームをアピールする物件がある。建物を解体せず、そのままで返せばよいというものだ。

通常の定期借地権付きマンションだと、「解体準備期の積立」、「借地契約終了の2~3年前までに建物解体を合意、退去」、「建物の解体」を組合主導で行う必要があるが、この方式だと、「居住者(管理組合)主導での解体実務が不要」、「借地期間終了ぎりぎりまで居住が可能」等の利点が示されている(ドレッセタワー南町田グランベリーパークの例)。

ただし、その分はマンションの販売価格や地代にコストが上乗せされているだろうから、価格とメリットを見極める必要があるだろう。

「相場より2~3割安い」は本当にメリットなのか

老夫婦で「終の棲家」として便利な場所に、予算を抑えて住宅を購入しようとしている人には定期借地権付きマンションは向いている。50年の借地権付きマンションでも、生きているうちに退去しなければならない事態にはならないだろう。

一方で若い世代にとっては疑問だ。確かに購入時の価格が抑えられるのは魅力だ。しかし、家族構成の変化、勤務先の変更、収入の急減などで住み替えをしなければならない状況になることもあるだろう。

転居を前提にすればいいのか、と言えばそうでもない。そうした若い人たちにとって、マンション価値が下がりやすく、また新規購入者の住宅ローン利用により厳しい条件が付きやすい定期借地権付きマンションは通常に比べてリスクが高いと言える。

また、土地は長く借り続けなければならないから地主側の将来の状況もリスク要因になる。地主との感情のもつれなどが起き、うまく売却ができない事態になる恐れも十分にある。

以上述べてきたように、同じ定期借地権付きマンションでも借地期間の相違、地代の支払い方法や金額の違い、建物解体義務の有無、地主との法的関係等に違いがある。

土地を購入しない分安いとされるが、毎月の地代の支払いのほか、マンション購入時に建物代金に加えて権利金(定期借地権の権利の設定対価)などを支払うのが一般的で、それゆえに通常のマンションより安いといっても2~3割程度だ。これを安いと感じられるかどうかはもちろん本人次第ということになる。

購入を検討している物件の、メリットとデメリット、潜在的なリスクをじっくり見極めて後悔のない選択をしてほしい。

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