勉強の機会を奪うのは最大の社会悪

彼らの中には、もし勉学の機会さえ得られれば、社会をリードしたり、画期的な発見をしたり、革新的なビジネスを興したりすることのできる人材がたくさんいるはずです。

しかし、彼らにその機会は与えられず、生まれたときと同じ貧しさの中で一生を過ごすのです。これは、なんと大きな社会悪でしょう。

バングラデシュの初等教育進学率は、いまは向上しました。それでも、2010〜19年の初等教育後期の修了率は、男性76%、女性89%です。後期中等教育になると、同32%、27%でしかありません。

アフリカには、初等教育後期の修了率が50%未満の国がいくつもあります(Unicef「世界子供白書2021」による)。多くの子供たちが、いまだに初等教育さえ受けられない状態に置かれているのです。生まれたときの貧困階級に一生固定されるのです。

「勉強社会」化が日本再生の最重要手段

いまの日本は、幸いにして、多くの人が教育を受けられる社会になっています。義務教育は、ほとんどすべての国民が受けることができます。大学への進学機会も多くの人に与えられています。

私が学生であった時代、日本の大学進学率は10%程度でした。大学に進学したくとも、家庭の経済的事情でできなかった者が大勢いました。高い能力を持ち、仮に大学に進学できたら、素晴らしい仕事をしたに違いない人たちが、その夢を実現できなかったのです。私は、そういう人たちを何人も知っています。

その後、日本経済の成長に伴って大学進学率が上昇しました。しかし50%程度になると、それ以降は伸び悩んでおり、世界の先進国の動向に遅れています。

つまり、日本人の誰もが望むだけの教育を受けられるかというと、いまでも、そうではないのです。経済的な事情によって大学進学をあきらめざるをえない人は、いまだに少なくありません。