アップルのクレカ、後払いサービスも誕生

2019年には米国でクレジットカード、“アップルカード”の利用が開始された。アップルカードの利用開始以降、アップルはゴールドマンサックスと組んで金融サービスを強化している。

投資銀行ビジネスを強化して成長してきたゴールドマンにとっても、アップルの金融ビジネスは金融規制に対応しつつ個人向け金融ビジネスの成長を目指すために重要性が高まっている。なおアップルカードには決済データと個人の情報が紐づかないよう設計が施された。

2023年に入って以降、アップルは金融分野での取り組みをさらに強化している。3月には米国でモノやサービスの購入代金を後払いする金融サービス、“BNPL=バイ・ナウ・ペイ・レイター”のサービスがはじまった。審査、融資の実施、与信の管理などは子会社であるアップル・ファイナンシングが担当している。その上で4月17日、アップルは預金サービスの開始を発表した。

不振の銀行に取って代わる存在として魅力的

預金サービス開始により、アップルカード利用者にとってのメリットは増える。まず、より高い金利を受け取ることができる。米連邦預金保険公社(FDIC)によると、4月17日時点で米国の預金口座の金利は平均で0.39%だ。アップルは4.15%とはるかに高い金利をつける。

3月上旬以降の米国では、一部中堅銀行の経営不安が高まった。アップルという企業の経営体力、ブランド競争力、潤沢なキャッシュフロー創出力などに裏打ちされた預金サービスは、アップルカード利用者にとって財産を守るための有効な手段に映るだろう。

加えて、決済など金融サービスの利便性も高まる。アップルのプレスリリースによると、預金サービスの利用者は口座間の資金移動などのために自分の口座と他行の口座を紐づけることができる。日次ベースでアップルの口座に入金を自動で行うこともできる。口座開設の手数料はかからない。一定の条件の下であれば、送金手数料もかからない。それによって、例えば音楽や動画視聴の料金支払いを自動化し、かつコストを抑えることが期待される。