欧州系格付け会社であるフィッチが5月22日、日本国債の格付けを9年ぶりに一段階引き下げ、「A+」にした。これで日本国債の格付けは、イスラエル、エストニアと同水準、韓国や中国、チリ、サウジアラビアよりも格下になった。

日本がバブル経済に踊っていた1980年代、日本国債は「AAA」という最上級格付けを取得していたが、バブル崩壊後、長期化した景気低迷とデフレ、税収不足によって財政赤字が積み上がった。目下、財政赤字の対GDP比は、ギリシャよりも高く、先進国中最悪の水準にある。本来、国債の格付けが下がれば、その分国の財政破綻リスクが高まるのだから、国債は売られ、長期金利が上昇して、円安が進むはずである。

しかし、日本国債が格下げされて以降、6月上旬までのマーケットでは逆に長期金利が0.8%台まで低下し、円高も進んだ。この動きは一般的に「リスク回避によるもの」という説明がなされている。ギリシャのユーロ離脱問題やスペイン金融危機などを受け、世界的に株価や通貨が下落するなか、日本だけでなく米国、ドイツ、英国でも長期金利が低下傾向をたどっている。リスク回避で元利金支払いが政府によって保証されている国債に資金が向かうのは自然の流れといえる。

特に日本国債の場合、大半が国内投資家によって保有され、さらに消費税引き上げの余地が高いことや個人の貯蓄率が高いことといった事情から、国債発行による資金調達が支障を来すまでにはまだ多少の時間的な余裕がある。

したがって、欧州問題という高いことや個人の貯蓄率が高いことといった事情から、国債発行による資金調達が支障を来すまでにはまだ多少の時間的な余裕がある。

したがって、欧州問題という目先に広がる大きなリスクを回避する先として日本国債が買われ、円高も進んだ。確かに格付けの引き下げにより、外国銀行のなかには日本国債のリスクウエートを引き上げるところが出てくるだろうが、現状、日本の国債保有者の大半が国内投資家なので、外国銀行の間に売りの動きが出たとしても、その影響は限定的と考えられる。

ただ、このような流れがいつまで続くのかという点については何ともいえない。日本国債の買いを支える国内投資家の資金は、現在、1400兆円ともいわれている豊富な個人金融資産に支えられている。銀行預金や年金、保険などを通じて、こうした個人マネーが大量に国債マーケットに流れ込んでいるわけだが、長期的に見れば、本格的な高齢社会の到来によって、徐々にこうした個人金融資産は取り崩され、消費されていく。

何しろ、個人金融資産の60%は、60歳以上の高齢者に集中しているのだから、この層が貯蓄の取り崩しに動いたときのインパクトはかなり大きなものになるはずだ。個人金融資産が流出超になったとき、国債を買い支えている国内投資家の買い余力が低下し、需給バランスが崩れることになる。

加えて、現在のパニック的なリスク回避行動が落ち着き、正常化に向けて動き出したら、「何でもいいからとにかく日本国債を買え」という動きも終息に向かうだろう。現状、長期金利で0.8%という水準まで日本国債は買われているが、これが債券バブルだとしたら、どこかで弾けることになる。結果、長期金利が上昇し国債価格が下落すれば、それを保有している国内投資家は多額の損失を抱えてしまう。金融機関は保有資産の時価評価がかなりの部分で進んでいるので、損失は銀行をはじめとした国内の国債保有機関のバランスシートに反映されるケースが多い。資産が大きく減れば国債を売らざるをえなくなる可能性がある。その後、一気に相場は暴落するだろう。

いずれ日本国債の相場が崩れ、長期金利が上昇すると想定したときに備えて個人ができる対策としては、少なくとも長期で変動金利型の住宅ローンは組まないことに尽きるだろう。