子供がウロウロするのは自然なこと

【養老】そういう教育でも僕たちの頃がよかったのは、子供が自由に遊びまわっていられたからです。当時の大人は生きるのに必死だったから、子供に構う暇がありません。学校がなくて放っておかれたら、僕たちは毎日、川に行って魚を釣ったり蟹を採って遊んでいたはずです。

そういう子を集めて学校でおとなしく座らせておくことには、子供にとってそれなりの意味がありました。僕は学校があったから静かに座って本を読むことを覚えました。

ところがいまは家に帰っても椅子に座ったまま、ゲームをやったりスマホをいじっています。学校に来ている子供は、むしろ外で遊ばせなければバランスがとれません。本も読みたくない子には無理して読ませることはありません。

物事にはタイミングがあるから、本が嫌いな子に無理やり読ませても、さらに嫌いになるだけです。

その意味では、いまの公教育は根本のところで崩れていると思います。そのうえ、教室で元気で自由に動き回る子供は、注意欠陥多動性障害だということになりました。教室の中で立ち上がってウロウロするのは、子供にすればごく自然なことです。子供は立ち上がってウロウロしているものですよ。

大人しく座らせ、暗記をさせるのが教育なのか

【養老】僕はいまでも講演の時は1時間半、ウロウロしながら話しています。それが人の自然の状態です。椅子に座ってじっとしている状態は決して自然ではない。それを自然な状態と思い込まされて、自分でもそう思ってしまっています。

教室
写真=iStock.com/tiero
※写真はイメージです

ところが、アメリカでそういう子供に意識覚醒効果のあるリタリンを飲ませています。200万人の子供に飲ませていると読んだことがあります。

【藻谷】ウロウロしているのが正常だと。何でも薬でいいのかとは思いますが、その基準なら最近の日本の大人しいいい子たちは、みんな病気ということになりますね。中高一貫のお受験校なんて、全員がそうだったりして。

その真逆で、とにかく大人しく座って一方的に聞いて暗記してなさいというような日本の教育システムを、もう少し能動的な人材を育てるためにも、作り直すことはできるのでしょうか。

【養老】学校教育では親と先生の役割が非常に大きい。だから、先生方と親が考え方を変えれば、いまよりもっと子供にとってハッピーな学校ができるとは思います。

太田敏という監督の『夢見る小学校』という映画を見ましたが、フリースクールのようなスタイルをとっている公立の小学校を丁寧に追いかけています。校長先生を中心に、ほかの先生や親が協力して、子供が何でも話し合って自由に決めて実行していく。例えば、話し合いには先生も加わりますが、最後の多数決を取るときは子供も先生も同じ1票です。