背が大きい、小さい、ほとんど変わらない。
容姿が良い、イマイチ、似たようなレベル。
頭髪にコンプレックスをお持ちの方なら、自分よりも髪の毛が薄い、濃い、どっこいどっこい。
スタイルを気にされている方なら、自分よりも痩せている、太っている、同じくらい。

そうやって、人間はあらゆることに関して他人と比べることをやめることができない生きものなのです。

頭の中は24時間、「慢」だらけ

お子さんをお持ちの親御さん同士でも同じです。

「あの子よりは運動神経がいいに決まっている」
「うちの子のほうがかわいいし、頭もいいだろうな」

みんな、心の中で同じことを考えています。同窓会や結婚式で久しぶりに再会を果たした旧友同士もそうです。

「○○さんって、まだ独身なんだね」
「お前、結局どこに就職したの?」

こんなふうに、口に出して質問(確認)してまで自分と比較をしたがる人も珍しくありません。

企業の社長さんたちが集まれば、お互いの会社の規模や年商の探り合いが始まります。作家さんや編集者さんが集まれば、相手がこれまで手掛けてきた本の発行部数が気になって仕方がないでしょう。YouTuberが集まれば、チャンネル登録者数と動画の総再生数の話題が飛び交います。

もう、24時間「慢」だらけです。

ノートパソコンを使用する女性
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです

「慢」がマイナスの感情を生み出す

かくいう私も、かつては「慢」に満ちていました。私は学生時代に空手をやっていたのですが、すれ違う男性のことをもれなく「自分よりも強いか、同じくらいか、弱いか」という目で見ていました。

とくに顕著だったのが、私が通っていた駒澤大学の周辺にある銭湯を利用した際。ご近所には日本体育大学がありますので、自ずと銭湯には屈強な肉体を持ったスポーツマンが集まることになります。

洗い場で隣に座った筋骨隆々の男たちをチラ見しては、「こいつ、俺よりも強いかな? 弱いかな?」と、いつも考えていました。おそらく、向こうも同じようにこちらを値踏みしていたと思います。

これはある種の“格闘家あるある”であり、典型的な「慢」なのです。

このように、人間は誰しもが自分と他人とを比較しながら生きています。そしてその結果、「羨ましいなぁ」「悔しいなぁ」「かわいそうだなぁ」「バカだなぁ」「みじめだなぁ」などという自惚れ、嫉妬、羨み、軽蔑などのマイナスの感情が生まれ、それが悩みや苦しみの原因になっていくのです。

「慢」は無意識に働くものですので、完全に捨て去ることはできません。でも、自分が「慢」に支配されている状況に気づき、それをセーブしていくことならできます。