部活加入の強制ルールは即刻廃止せよ

では部活の何をどのように改革していけばいいのか。

繰り返される死亡事故、見て見ぬふりをされてきた体罰や暴力を、一刻も早く止めなくてはならない。苛酷な勤務状況に苦しむ教師を救い支えなくてはならない。生徒と教師を苦しめる部活のやり過ぎを規制しなければならない。

政策レベルの具体策としては、体罰・暴力事件や重大事故を未然に防ぐ指導者研修や環境整備を徹底すること、それでも体罰・暴力を振るった顧問教師や指導者は即刻追放すること、生徒を強制参加させる学校ルールをすぐ廃止すること、各部の活動量・日数・時間を国のガイドラインなどに沿って適切に規制することなどが考えられる。

もちろん、今年度から本格的に始まった地域移行政策にも注目が集まる。そのためにも、部活のダウンサイジングは必須だ。

しかし、こうした政策的介入は、「自主性の罠」に絡み取られて、うまく現場に浸透できないことがある。「自主的にやっているんだから邪魔をするな」「勝手に上から規制すべきじゃない」「現場の自主性に任せるべきだ」との声が挙がるのは想像に難くない。この自主性の罠が部活を混乱させ問題を生んできたことは前述の通りだ。

自主性の前に法律を守らなければならない

だから、部活を改革するために、部活の内側に込められた、自主性という恐ろしい魔力から逃れなければならない。そのシンプルな方法は、部活の外側に目を向けることだ。

部活の外側には社会がある。その社会のあり方は、法律で決まっている。部活は何でもアリなわけではなくて、大前提として法律がある。

自主性のすばらしさを叫ぶ人ほど、このことを忘れてしまう。愛のムチだか何だか知らないが体罰は許されない。なぜなら、法律でそう決まっているからだ。「自主性」を叫ぶ前に、法律を守らなければならない。至極当たり前の話だ。

もうひとつ、部活の外側にある授業とも比べよう。授業は、生きていく上で必要な知識や技術を、生徒に身につけさせるためにある。だから、生徒の好き嫌いは二の次で、生徒は授業を受ける必要がある。

でも部活は、生きていく上で絶対に必要なわけではない。必要だから仕方なく部活をするのではなく、したいから部活をしているに過ぎない。それが教育「課」程「外」=課外活動であることの意味だ。「授業はさておき部活をがんばればいいんじゃないの?」なんて、部活に甘えてはいけない。

部活の外側に目を向けて、部活や「自主性」よりも大切にすべき法律や授業がある、という当たり前の事実を認識しなくてはいけない。

最後に、語り口を変えて、部活の当事者である生徒へメッセージを送りたい――。

生徒のみなさん、ホンネで話しましょうよ。みなさんのホンネを聞かせてくださいよ。

たとえば、アンケートをとるのは手っ取り早い。紙に印刷して配布するのが面倒ならば、GoogleフォームのURLをスマホで共有すれば、すぐにできます。周りの視線が気になるなら、匿名だって構いません。匿名でも声を拾いあげたほうがいい。普段思っていることを言えないままでいる方が不健全です。

面と向かって話し合える人間関係があるなら、リラックスしておしゃべりする「部活井戸端会議」を企画してはどうですか。その日は練習なんて無しでいいです。ざっくばらんにホンネを交わせる場を用意することは、とても大切ですよ。せっかくだから、ジュースやお菓子を用意するくらい、学校も許してあげてください。

ホンネを出せるようになれば、気持ちや考えも固まってきて、各人の意見がつくられてくるでしょう。すると多様な意見が出てきて、違った意見とぶつかることもあるでしょう。それも、ぶつからないより良いんです。いろいろな意見をまとめたり、ときには妥協したり、説得したり、納得したりするプロセスこそ豊かな学びになるはずです。

意見を集約する方法として「部活総選挙」を実施することもできます。どうしても意見が合わないなら、それぞれの意見を尊重するために、分離して活動したり、教師の負担が大きくなりすぎない範囲で別の部を新しく創部したりすることもできます。部活の自由度は、想像以上に大きいんですよ。

そうそう忘れるところでした。「イヤイヤやってたから、ぶっちゃけ部活やめたいんだよね」とホンネを漏らす生徒がいたら、ぜひ退部の選択肢を認めてあげてくださいね。

生徒のホンネを大切にした、地に足ついた部活改革をスタートさせてほしいと願っています。

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