2:女性の年金の壁

無業の配偶者付き男性を前提とした日本の働き方は、家族単位の社会保険制度と一体的な関係にある。世帯主の社会保険で保護される無業の配偶者がパートタイムで働くと、自ら被保険者とならなければならない年収106万円と、被扶養者の資格を失う130万円の「2つの年収の壁」がある。

彼女は仕事をしていて、家で育児をしています。
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この壁が、最低賃金の引き上げや厚生年金の適用対象の中小企業への拡大と相まって、パート主婦が年間に働ける日数がいっそう少なくなってきてしまっている。

これに対してはどんな対策が必要だろうか。真っ先にすべきなのは、単身者や共働き世帯との公平性に欠ける、現行の世帯単位の仕組みの変更である。つまり被扶養配偶者も、世帯主と同様に社会保険料を負担する、自営業のような個人単位の制度に転換するのが本筋だ。

現に1985年の年金制度改正の前には、厚生年金の被保険者が、配偶者のために任意で国民年金に加入できる仕組みがあり、実に7割の世帯が保険料を負担していた。

年収の壁によって、本来歓迎すべき賃上げ(収入や時給のアップなど)が労働者に不利になるという歪んだ現状の制度を改革することは、一時検討されたものの、最後には落とされた。今後、避けて通れない大きな課題のひとつとなる。

3:児童福祉の壁

女性が子育て後も働くことが普遍的となっている社会では、保育所は欠かせない社会インフラである。待機児童数はピーク時から大きく減少したものの、認可保育所の利用には「保育認定を受けなければ利用できない。フルタイムと比べてパートタイム就業者は不利であり、また育児休業中には母親が働いていないとして、上の子どもが保育所から退所を求められる現実がある。

これは認可保育所が、子どもが家族により保育されることが大原則で、母親が就業する、当時としては例外的な家族の子どもを保護することを目的とした児童福祉法にもとづいているためだ。しかし、共働き家族が全体の7割を超し、標準的な働き方となっている現在では、時代錯誤な制度である

また、核家族化で一人っ子も増えているなかで、保育所は幼稚園と同様に、幼児教育の場でもあり、福祉よりも健全な「保育サービス」を提供する場となっている。これは専業主婦家庭でも同様であり、少なくとも週に1-2回の預かり保育を、応分の負担で受けられることが真の子育て支援である。

今回の対策で、就労要件を問わず時間単位で柔軟に利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」が示された。しかし、単なる保育所の空き時間のみの活用では不十分である。現行の児童福祉制度の「木に竹を接ぐ」のではなく、真の子育て支援のための保育所への改革が本筋である。