同記事はまた、台湾軍の機能について、「台湾軍の主な目的の一つは、アメリカなどの同盟国が台湾を支援できるよう、中国人民解放軍を2週間食い止めることである」と指摘し、台湾軍単独での防衛に疑問を示した。

一方で台湾の邱国正国防相は、台湾の軍隊の準備態勢が十分に高ければという条件の下、中国による初期の攻撃を撃退できるとの見解を示している。同氏は、中国軍が紛争を起こす実力を持っているとの認識を示したうえで、1~2週間で台湾占領を達成するだけの力はないと語った。

台湾の台北時報タイペイ・タイムズはシミュレーション結果を基に、「机上演習で『身の毛もよだつ』損失、中国が敗北の見込み」と報じた。4万人が死傷する中国側に対し、台湾軍も2万6000人以上の死傷者が出る厳しい結果を伝えている。

2017年5月25日、米太平洋軍が現役の将官を派遣した年次演習「漢光33号」にて
2017年5月25日、米太平洋軍が現役の将官を派遣した年次演習「漢光33号」にて。(写真=總統府/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

24のシナリオを分析した米シンクタンク

財団によるシミュレーションはあくまで机上の議論ではあるが、決して絵空事とも言っていられないようだ。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が1月に示した戦闘シミュレーション結果も、この結果とほぼ一致する内容になっている。

CSISはシミュレーションのモデルを構築するにあたり、過去の歴史的な軍事作戦の事例を参考にしたという。例えば中国が台湾上陸を仕掛ける際に用いるであろう上陸艇の立ち回りについては、ノルマンディー上陸作戦や沖縄での戦闘など、歴史上の実際の軍事衝突での事例をデータ化した。

こうしたデータの下、部隊同士が衝突した場合の双方の損失を予測するモデルをあらかじめ構築し、机上で摸擬戦闘ゲームを実施した。政府高官や軍経験者などの経歴を持つプレーヤーが各軍をプレーし、個々の戦闘結果は前述のモデルに基づき、一定のランダム性を交えながらコンピューターが算出した。

24種のシナリオにしたがってシミュレーションを実施した結果、大半のシナリオでは、日米の助力によって台湾側が中国の上陸作戦の阻止に成功し、自治を維持する結果に至ったという。

開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅

各シミュレーションの詳細を見ると、侵攻序盤の展開については、どのシナリオもほぼ同じ動きとなるようだ。台湾にとって悲報となるが、開戦直後のわずか数時間で、台湾の海軍と空軍はほぼ壊滅的な打撃を受けるという。

中国軍は強力なロケット部隊を展開して島国である台湾を包囲し、日米が軍艦やジェット機を島内に配備することを拒む作戦に出る。

こうして時間を稼いだうえで中国側は、数万人規模の中国兵を軍用および民間の上陸艇に乗せて海峡を渡り、海岸堡かいがんほと呼ばれる一時的な上陸拠点を海岸に設置する。安全を確保したこの拠点の後方に、空挺くうてい部隊が次々と舞い降りるという。