ひと昔前は「UFOキャッチャー」と呼ばれていたクレーンゲームは、いまや全国に専門のゲームセンターができるほどの人気だ。鹿児島大学で物理学を教える小山佳一教授は「趣味として30年以上前からクレーンゲームの進化を見てきたが、最新のマシンは2本アームが3本になるなど、本当に攻略が難しい。しかし、2006年ごろにゲーセンで配られていた基本技は今でも有効ではないか」という――。

※本稿は、小山佳一『クレーンゲームで学ぶ物理学』(インターナショナル新書)の一部を再編集したものです。

ゲームセンターのUFOキャッチャー
写真=iStock.com/Starcevic
※写真はイメージです

物理学者としてクレーンゲームの規則性、周期性を観察する

「何か規則性や周期性が隠れていないか?」や、「規則性や周期性がある条件でズレないか?」ということの確認が職業的習慣になっている私は、日常生活でも、規則性や周期性を探していて、見つかったときはものすごく嬉しくなります。研究での発見と同じくらいのガッツポーズです。例えば、幾つもの交差点のある長い車道で、各交差点に設置されている信号機の色が変わる順序やパターンがわかったときなどです。そして、それは、ゲーセンに入っても同じなのです。

自ら100円を投入してクレーンゲームをプレイしているときは、物理を使ったプライズ(ぬいぐるみなどの景品)ゲットに集中しているので、規則性や周期性を見出す心の余裕は全くありません(なんとなく感じるときはありますが)。一方、他人のプレイの様子を見ているときは、ゲーム機の動きに「何か規則性や周期性が隠れていないか?」や、「規則性や周期性がある条件でズレないか?」、さらに「ゲーム機のくせはないか」、と探してしまいます。これが私には楽しく、休日などにゲーセン散策に行く理由の一つです。

2023年、同行者の妻が景品を取れる確率に先に気づいた

2023年のある休日、家で本書の原稿を書いているときに妻が、「食料品購入のためショッピングセンターに行くけど、どうする?」と、聞いてきました。帰りは荷物も重いはずです。私は、二つ返事で、「ついて行くよ」と答え、そそくさと車に乗り込みました。そのショッピングセンターにはゲーセンが併設されているのです!

店に到着した私は、食料品を買う前に妻を誘い、まずゲーセンに入りました。とりあえず妻とは別行動で、ゲーセン内の広いクレーンゲームコーナーを各自で散策します。私はフィギュアコーナーを、妻は別コーナーです。私のフィギュアコーナー散策は、置き方の設定の確認とプライズゲットのイメージトレーニングが目的です。

10分ほど経って、妻が意味ありげに笑みを浮かべながら私のところに来て、衝撃の言葉を発しました。

「○○のゲーム機って、●●回に1回取れているようだけど?」

ここでは、これを「妻の仮説」と呼びましょう。

私は、「マジか!」と思わずつぶやきました。常日頃から学生に「何か規則性や周期性が隠れていないか?」と言っている自分なのに、目の前の規則性に気づかないなんて⁉️