問題解決にかかる年数は

ただ現実を見ると、今後10年単位では火力発電は新設よりも廃止が超過する見込みで、東日本で稼働が見込める原子力発電も限定的である。つまり発電能力の大幅な積み増しは短期的には期待できない。

そういうわけで東日本に住む我々はこれから少なくとも2~3年、長ければ10年は電力不足という現象と付き合う覚悟が必要だろう。

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写真=iStock.com/freemixer
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この現状は東日本大震災以降の10年強の積み重ねで生まれたもので、これを解決するのに10年くらいはかかるのである。

いずれにせよ複合的な要因でこれから数年は東京エリアでは夏冬の電力事情がかなり厳しくなることはほぼ確実で、これに対する有効な対策は節電以外にないのが現状だ。

ただ繰り返しになるが、この電力不足に伴う節電自体が我々の生活に深刻な影響を与えるようなことはないだろう。問題は他のところにある。

国際的に日本の電気代は高い? 安い?

さて前項で「電力不足そのものは大きな問題ではない」と述べたが、一方で足下で起きている「電力料金の高騰」という現象は大きな問題である。

目下日本では電力料金が上昇中で、2022年11月時点の消費者物価指数を見ると2021年から我が国の電力料金は20%程度上がっている。これだけでも生活が苦しいのは間違いないが、現状国際的に比較したとき、日本は必ずしも電力料金が高いとは言えない。

代表的に足下の2022年末の大口の電力料金を日独米で比較するとだいたい、

・日本:22.58円/kWh
・ドイツ:0.175€/kWh(≒24.7円/kWh)
・アメリカ:0.861$/kWh(≒11.4円/kWh)

と日本はアメリカに比べれば高く、ドイツに比べると少し低いという水準である。

ただドイツの場合は8月には0.469€/kWh(≒66.1円/kWh)まで上昇しており、非常に変動が激しくなっている。

このような値動きは言うまでもなくウクライナ戦争後の天然ガスの市況の影響によるものである。欧州はLNGの調達におけるスポット市場からの割合が高いので、天然ガスの市況に連動する形で価格が乱高下した形だ。