数年は夏と冬に節電が強いられる

そのため「少なくともこれから数年は需要が増える冬や夏は電力が不足する」という前提で生活を考える必要がある。

他方で電力不足の生活の影響については、現状のレベルで止まるなら大きな問題ではないというのもまた事実である。なぜかというと「我々の緊急時の節電ノウハウが上がってきている」からだ。

本当に電力不足の危機に陥るのは年間でせいぜい数週間から数カ月で、これくらいの期間の不便ならば良くも悪くも我慢や工夫で乗り切れてしまうということがデータで見えてきている。

電力需給に関しては一般に電力の予備率が10%を切ると停電への黄色信号が点ともり普段使わない発電所が稼働し始める。そして予備率が8%を切ると本格的な対策が始まる。

具体的には、

・前日に予備率8%を切る見込みとなると「電力の需給ひっ迫」と認識され、企業レベルでの節電が本格化する
・それでも前日時点で予備率5%を切る見通しになると、政府から「需給ひっ迫注意報」が発令され、翌日に向けての家庭レベルでの節電が要求されるようになり、
・さらに前日時点で予備率が3%を切る見通しになると「需給ひっ迫警報」が発令される
・ここまでしてもどうにもならずに当日に予備率が1%を下回ると、実需給の2時間程度前から「計画停電の実施」が発表され、政府から強制的に電力の使用が制限される。

という流れで停電対策が実施されていくことになる。

目安としては、

・予備率5%を切る見込みになったら生活レベルでの節電を意識をせざるを得なくなり、
・予備率3%を切る見込みになったら、部分的に強制的な停電が始まる覚悟が必要というところであろう。

電気パイロンとライン美しい空と地平線上の夕日。
写真=iStock.com/Yelantsevv
※写真はイメージです

普段から電気を使いすぎ

ただ我々の生活における節電ポテンシャルは案外大きく、2022年6月30日の場合は、前日の予測時点で予備率は3.1%とかなりの危険水準だったのだが、当日の実績は節電の効果の積み重ねで予備率9.3%まで抑えられた。

もちろん時間帯によってはかなり綱渡りの電力供給体制となったわけであるが、ただ結果だけを見れば節電の余地が豊富で、節電要請がかなり効果を上げることになった。

これは一過性のものではなく、電力需給が厳しいと見られていた7月を通してもそのまま乗り切ることができた。我々は普段結構電気を遠慮なく、過剰なくらいに使っているのである。

そういう意味では繰り返しになるが、電力不足と言っても現状のレベルで止まるならば、“それ自体は”大きな問題ではないと言えると思う。

もちろん、太陽光発電の不調が長期化したり、ウクライナ戦争の影響で今以上に燃料調達が順調にいかなくなったり、といった追加の事態が起きれば節電ではどうにも対応できなくなるので、供給力の積み増しがあった方が望ましいことは間違いない。