「子どもカサンドラ」の人生は過酷

そんな「子どもカサンドラ」の人生は苛酷です。

「誰にも理解してもらえない」という思いが強く、成人後も対人関係に不安定さを抱えます。それが原因で、さらにつらい経験をするという悪循環を繰り返すことも多いのです。

精神科や心療内科を受診し、原因が親の発達障害にあると気づくことで、治癒に向かうケースもあります。

複雑性PTSDになりやすい

「子どもカサンドラ」は、複雑性PTSDになりやすいことが知られています。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、戦争や大災害など、生死に関わる強烈な体験のあとに、フラッシュバックなどの症状が現れるというものです。

もともとベトナム戦争から帰還した兵士に、数多く見られた精神疾患です。

益田裕介『精神科医が教える 親を憎むのをやめる方法』(KADOKAWA)
益田裕介『精神科医が教える 親を憎むのをやめる方法』(KADOKAWA)

一方、戦争や大災害のような強烈な体験だけでなく、家庭における長期間の虐待なども、PTSDによく似た症状を引き起こすことがわかってきました。これを普通のPTSDと区別して「複雑性PTSD」と呼んでいます。

PTSDに特有の症状はフラッシュバックです。

「心的外傷」をもたらした戦争や大災害などの強烈な体験を、自分の意志とは無関係にふと思い出して苦しんだり、フラッシュバックを引き起こすような場所を避けたりします。

一方、複雑性PTSDでは、フラッシュバックに加えて、感情の調整や対人関係の困難などの症状がみられます。

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