極端な人たちが互いを攻撃し続ける空間

【小島】なるほど。「おおかたの意見」を知るためにネットを見ても、実は「極端な人」しか見えていないんですね。これは肝に銘じておかなければですね。

【山口】この傾向は、例えば憲法改正というテーマについて分析すると顕著に表れます。「改正に大いに賛成である」から「改正には絶対に反対である」までの七段階で社会の意見分布を調査すると、山型の分布で中庸的な意見の人が最も多い。

ところが、これをSNSの投稿回数で分析すると、最も多く発信されているのが「大いに賛成である」人の意見です。そして次に多く発信されているのが、「絶対に反対である」人の意見。この人たちはそれぞれ社会全体の7%を占めているに過ぎないのですが、SNS上の発信量では合計46%、つまり約半分を占めていた。

この人たちは極端な意見を持っているので議論にはならず、互いを攻撃することに終始する。これこそがネットで起こっている現象です。私たちは、そういう構造のなかで切り取られた世界だけを見ているんですね。

問題は、マスメディアもそのことをあまり理解できていないということです。私が新聞社から取材を受ける際にも、SNSではこのあいだまでこういう意見だったが、ある時期以降こういうふうに変わっている、これはなぜか、というふうに訊かれることがあります。それは端的に発信者が変わっただけです。ごく一部を切り取ったところしか見ていないがゆえに、人の意見がコロコロ変わっているように見えるんです。

小池都知事は「Twitterで人気ゼロ」でも圧勝

【山口】まずは、自分の見ている世界が切り取られた偏ったものであるということを理解する必要があります。

わかりやすい事例で言うと、前回の東京都知事選では小池さんが圧勝したわけですが、Twitterを分析すると二つのクラスターが出てきたんですね。一番大きいクラスターは、小池さんを批判するもの、データ上は90%くらいを占めています。もう一つは10%のクラスターで、桜井誠さんという保守的な候補を推す人たち。

Twitter上には小池さんを応援するクラスターは一つもなかったのですが、選挙結果はトリプルスコアくらいでの勝利でした。ネット上の意見は世論とは別物だということがよくわかります。ネットの意見を参考にするのは別にいい、そこからわかることもたくさんあります。しかし、重要なのは「ネット世論」は世論ではないという事実を押さえておくことで、それを知っているか知らないかということだけでも全然違うと思います。