対処法を先に話し、都合の悪いことは最後に伝える

ポイントは、改善や修正の仕方(How)、つまり、対処法から先に伝えていくこと。人はいったん恐怖を感じてしまうと、その後の情報を遮断してしまう傾向があります(Leventhal,1965)。ですから、都合の悪い話を先に伝えて相手がフリーズしてしまう前に、具体的な対処法を示すようにしましょう。私はこれを「対処法先行モデル」と呼んでいます。

たとえば、クライアントの部長が激怒していることを自社の同僚に伝えなければいけない場面では、「○○会社の部長、お前にめちゃくちゃ怒っていたよ。だから謝りに行ったほうがいいよ」と伝えても同僚は動揺するだけです。

そうではなく、先に対処法を用意して、そちらから話を切り出します。

電車の中で向かい合って会話をする2人のビジネスマン
写真=iStock.com/pixelfit
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「○○会社の部長、趣味がサウナなんだって。整ったあとはすごく機嫌がよくなってなんでも話を聞き入れてくれるらしいよ。だから、菓子折持ってそのサウナが入っているビルの前で待ち伏せしてきなよ。なんでって? 部長、おまえに激怒しているみたいだから」と。

こんな順番で耳の痛い話を伝えれば、同僚も打開策を試してみようと考えてくれるはずです。

このように相手にとっての恐怖となり得る情報を話さなければいけないときには、その対処法を必ず事前に伝えるよう準備しましょう。ちなみに、相手が安心し、あなたに感謝してくれる対処法のポイントは以下の通りです。

結論から伝えることが常に正しいとは限らない

・相手がすぐに実行できること
・実行するための心理的なハードルが低いこと
・すぐに結果が出そうなこと
・成功確率が高そうと期待できること
・恐怖を回避できる可能性を感じられること

相手にとって耳の痛い話、都合の悪い話を伝えるからこそ、対処法はできるだけ具体的に。すると、ピンチに役立つ助け船を出してくれた人という印象を残すことができます。この積み重ねによって相手を自分のファンにしていくことができるのです

最後に、対処法先行モデルを用いる際の注意事項を1つだけお伝えします。

注意点としては、耳の痛い話や都合の悪い情報を伝える相手がせっかちな人の場合、対処法(前置き)が長かったりすると、「結局、何がいいたいわけ?」と言われてしまう可能性があります。そのような相手には、結論を先に提示しましょう。

このように結論から先に伝えることを、私は「結論先行モデル」と呼んでいます。通常のビジネスシーンでは「結論ファースト」と呼ばれる定番の方法です。一方、今回のテーマのように耳の痛い話や都合の悪い話など相手にとっての恐怖となり得る話題の場合は、結論から伝えることが必ずしも正解でないことも知っておきましょう。