相手にとって都合の悪い話を、角が立たないように伝えるにはどうすればいいのか。教育コンテンツプロデューサーの犬塚壮志さんは「結論から先に話すと、相手から拒否される場合がある。状況に応じて話す順番を変えたほうがいい」という――。

※本稿は、犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)の一部を再編集したものです。

オフィスの廊下を歩く2人のビジネスマンの後ろ姿
写真=iStock.com/LeoPatrizi
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肝心なところでうまくいかないこと、ありませんか?

「なんで、自分ばっかり仕事を押しつけられているんだろう……」
「なんか、いつもアイツに言いくるめられてしまう……」
「親しくなりたい人となかなか距離が縮められない……」
「これ、買うつもりなかったのに、なんですすめられたまま買っちゃったんだろう……」

これはすべて、ほんの4、5年前まで私が抱えていた悩みです。人付き合いがものすごく苦手というわけではありませんでしたが、肝心なところでうまくいかないもどかしさを抱えていました。このような感覚は私だけでなく、多くの人が普段の生活の中で一度や二度、感じたことがあるのではないかと思います。

一方で、私はこんな人たちとも出会ってきました。

・頭の回転が速く、気の利いた言い回しができる
・コミュニケーションがうまくて、いつも冷静沈着
・他人と言い争ったり、トラブルを起こしたりはしない
・でも、周囲の人たちに忖度そんたくはせずに、自分の意見はしっかりと主張する
・仕事もプライベートも順風満帆
・人間関係で1ミリもストレスを溜めていないように見える

こうした対人関係をスマートにこなす人たち。私は彼らをうらやましく思いつつ、対人関係の秘訣ひけつを研究するうち、共通するスキルがあることに気づきました。

それが「交渉術」です。

交渉術と聞くと、弁護士や外交官など、特定の職業の人にだけ必要なスキルのようなイメージがあります。しかし、対人関係をスマートにこなし、人に対して強くなるためには、「交渉術」のテクニックが必要不可欠だったのです。具体的に説明していきましょう。

「有利な合意を目指す」だけでは足りない

辞書を引くと、「交渉とは、ある問題やある議題について相手と話し合うこと」と書かれています。ただ、この定義には重要な言葉が欠けていると思いませんか?

それは「(自分にとって)有利な合意を目指すこと」です。

私はこう考えています。交渉とは、ある問題やある議題について相手と話し合い、丸め込まれることなくあなたにとって有利な合意にいたること。交渉術とは、ある問題やある議題について相手と話し合い、あなたにとって有利な合意を勝ち取るテクニックです。

たとえば……

・職場の上司から自分のスケジュールに合わせた休暇の許可を得るのも、
・取引先からより良い条件の契約を取るのも、
・知り合いからの面倒なお願いをスマートに断るのも、
・家電量販店で納得のできる値引きに成功するのも、

すべて有利な交渉が生んだ、対人関係の結末です。ただ、「交渉の理想的な結末」はここで終わりません。頭のいい人が身につけている交渉術、(以降、頭のいい交渉術)を使いこなせるようになると、あなたにとって有利な合意をしたあとに、交渉相手も笑顔になってしまいます。

つまり、こういうことです。