さらにコロナ禍を経て、利用者も増えました。人と人との距離がますます広がっているのも1つの要因です。また話す人はいても、表面上のコミュニケーションで人に合わせるばかりで、本心で話せる人がいないと疲れてしまう。本音を言えずに気を使う人は、ますます孤独を感じるでしょう。

外側から見たらメンタルが強く、問題なさそうな人でも、実は心に問題を抱えている方は、世の中にたくさんいるのです」

愛情はお金で買える

幼い頃の母親との関係性も1つのポイントだ。

「利用者の中には、小さい頃、お母さんに甘えたかったけど上手に甘えられなかった方もいます。上手に甘えられないと、子供の頃に必要な『心の安全基地』が少なくなってしまう。子供だけでなく、大人も一緒です。心に安全基地があると、困難を乗り越えて、一歩前に進むことができます。

「落ち込むこともあるけれど、私は元気です」。そう笑顔で言える日は、きっと来る。
「落ち込むこともあるけれど、私は元気です」。そう笑顔で言える日は、きっと来る。

私たち現代人は『安心』を求めているのです。それを取り戻すためのサポートをするのが、私たちの目的です。

もちろん『レンタルお母さん』はあくまでも代行サービスであり、主役はご家族です。お母さんというのは唯一無二の存在ですが、そんな本物のお母さんがいながら、足りないところを少しでも補えたらいいなと思っています」

所属するお母さんの中には、カウンセラーの資格を持っている人もいるそうだ。しかし資格やスキルよりも、優しさや思いやりを持っている人を採用基準にしていると金澤氏は言う。

「もしも夫婦や家族で問題が生じていたら、間を取り持つこともしています。もしも本当のお母さんとの関係がうまくいかないなら、うまくいくように手助けをしたい。本来の家族との絆、心のふれあいとはこういうことです、と理解していただき、実践してほしい。

『和を以て貴しとなす』という言葉があるように、『本来の日本にはお互いを尊重しあい、協調することが何よりも尊い』という考え方がありました。かつての日本はコミュニティが絆で繋がれていましたが、今やそれが希薄となり、家庭の中でも個々で過ごすようになりました。そうした絆を通して生まれる豊かな人間性を取り戻す手助けができればいい。このように考えています」

人知れず悩みを抱える現代人。誰にも言えない悩みは、赤の他人であるから話せることもあるのかもしれない。本当に、レンタルお母さんには何でも話していいのだろうか。

「ご安心ください。私たちは偏見や差別なく話を受け入れる訓練をしています。誰にも言えないことでも、困ったときに利用をしていただきたいですね。ただし、医療行為や性的サービスには対応しておりません。スタッフがお酒を飲むことも、判断能力が鈍ってしまうのでNGとしています。もちろん晩酌へのお付き合いはできますが、ノンアルコールでの対応になります。依頼主が男性の1人暮らしの場合は、スタッフ2名からの対応としています」

最後に、こうした安心を提供するサービスがもっと日本中に広まったら何が起こるのか、金澤氏に聞いてみた。