他人が叱られる様子がエンタメになっている

こうした覗き見欲求を満たすものとしては、「叱られエンタメ系」の動画もZ世代に受けています。例えば、春木開さん(@harukikai_positive)が投稿した、UberEatsの配達員に偉そうな態度をとった社員を社長が叱る動画「初めて社長を怒らせてしまいました。」は460万回再生です。

@harukikai_positive

初めて社長を怒らせてしまいました。

オリジナル楽曲 - 春木開の付き人 - user51303556856

また、ねぎしこ社長(@negisi.33)が投稿した、遅刻しがちなキャバクラ嬢を時間通り来させるようにと社長がスタッフを叱りつける動画「お客様を想うあまりです」も510万回再生です。

今は少し強く叱責しっせきすればパワハラと言われ、怒鳴るなどもってのほかとされる時代。そのため、Z世代は叱られた経験が少なく、他人が叱られているシーンを見ることもあまりありません。

だからこそ、他人が叱責される様子をエンタメとして楽しみつつ、かつ叱られたら場がどんな雰囲気になるのか、自分が叱られないためにはどうしたらいいのかも知りたいというわけです。

また、似たようなニーズからバズったものとして「見下し安心系」があります。これは、いかにも身近にいそうな陰キャ(陰気なキャラクター)や仕切りたがり、イケメンではないのにイケメンポーズを決めるなどの“イタい人”を、モノマネして見せる動画です。

見る側は「こういう子いるよね」「イタいよね」とエンタメとして面白がりながら、自分がそう見られないようにと参考にしたり、自分がそうしたキャラクターではないことに安心感を覚えたりする。バズった背景には、そうした構造がうかがえます。

LGBTQの人の本音を知りたい

さらには、LGBTQをオープンにしている人のリアルな声がわかる「LGBTQ理解系」の動画も人気を集めました。例えば、「元女子に○○を聞いてみた」という動画を投稿する、奏太【かなたいむ。】(@kanata_1023)さんです。奏太さんはトランスジェンダーのクリエイターで、「男子になった今、胸はどうなってる?」との質問に答える動画は約170万回再生になっています。

Z世代はジェンダー平等に関してしっかり教育を受けていますし、LGBTQをオープンにしている知り合いがいる子も少なくありません。そのため、当事者を偏見の目で見ることはほとんどありませんが、とはいえ本人にあれこれ聞くのは失礼だろうというためらいもあります。

自分では聞けないけれど、本当はとても興味があるし当事者の感覚も知りたい。LGBTQ理解系は、そんな思いに応えてくれるものだったからこそバズったのだと思われます。