「サラリーマンにも青色申告を」

このように青色申告の自営業者は、イカサマする余地が大きく、なおかつさまざまな優遇税制で守られている。「クロヨン」「トーゴーサン」と言われてきたとおりだ。本来納めるべき税金が納められずに一番割を食うのは、経費のごまかしがきかないサラリーマンだろう。

会社員は不公平感が大きいはずなのに、文句をあまり聞かない。一応は給与所得者にも、自営業者の必要経費にあたるものとして、「給与所得控除」と「特定支出控除の特例」が認められている。ただ、給与所得控除は給与額に応じて控除額が決まる。特定支出控除の特例も限定的で、活用しているサラリーマンはほとんどいない。

従って、不公平をなくすため、日本もアメリカのように、サラリーマンが自営業者と同じ基準で税金の申告をする制度にしてはどうか。たとえばサラリーマンが家に書斎をつくってPCを置き、本を買ったり研修を受けたりして勉強したとしよう。アメリカではそれらの費用を、給料を稼ぐための必要経費として計上できる。住宅の建築費も、書斎の面積に応じて減価償却が可能。日本の個人商店が住居の1階を店舗にして減価償却するのと同じだ。

源泉徴収と年末調整に慣れきった日本のサラリーマンは、自分で申告するのは面倒だと思うかもしれない。しかし、それは申告=税金を払うためのものという負担のイメージがあるからだ。アメリカでは税務申告を「タックスリターン」と呼ぶ。つまり、払い過ぎた税金を還付させるために行うものであり、むしろ喜んでやっている。しかも日本と違ってQuickenなどの会計ソフトを使って電子化が進んでいるから、事務作業が苦にならない。

連合などの労働組合が労働者の味方を自任するなら、「サラリーマンにも青色申告を」と打ち出したほうがいい。賃上げ要求も結構だが、懐具合に与える影響は必要経費の控除のほうが大きい。そして自営業者を例外にせず全員に公平な税制を実現することが、組合と政治家の本当の仕事だろう。

(構成=村上 敬 写真=PIXTA)
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