前提として、性別のない「ゼイビー」としての子育ては、子供が成人後もゼイビーであることを意図していない。デイリー・メール紙は、ノンバイナリーであることを強制するためではなく、将来どちらでも選べるようにとの意図だと説明している。

実際にイギリスでゼイビーを育てているというある親は、ガーディアン紙に対し、本人が性別を言語化できるようになるまでは性別を割り当てたくないと話している。ずっとノンバイナリーでいることを強制するものではなく、将来成長した段階で自身の性自認に合わせて生き方を選んでほしいという願いが込められているようだ。

そのうえで主な意図として、幼い頃から「男の子だからこうあるべき」「女の子だからこれはできない」という考えに縛られるのを避け、男女両方のポジティブな面を習得させたいというねらいがある。

インサイダー誌は、子供は2歳ごろからすでに、他人が自分の性別をどう認識しているかを感じ取るとの研究結果を引用している。また、専門家によると、この年齢の子供は早くも、周囲の大人たちの性別とそこに期待される役割を感じ取るのだという。自分自身の性にその役割を当てはめ、社会のなかで期待された役割をおのずと演じようとする傾向があるようだ。

そのため、子供自身に性別を強く認識させることを避け、社会的に押しつけられた役割にとらわれずに成長させたいとの考えが賛同を集めるようになった。

スクールバスを降りて、学校に向かう子供たち
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苦しんだ経験を子供に繰り返してほしくない

フォーブス誌はこのようにして、ジェンダーのステレオタイプに惑わされることのない成長が期待できるとの利点を挙げている。さらに同誌は、たとえばSTEM分野(科学・技術・工学・数学)における女性の進出を促進するなど、社会的な性差の是正になるとの期待を示している。

これとは別に、熱心にジェンダーニュートラルな育児を続ける親のなかには、自身の経験した苦しみを繰り返したくないという思いもあるようだ。親自身がノンバイナリーであり、周囲からの期待との相違につらい思いをしてきたというケースが少なくない。

オーストラリアのある親はデイリー・メール紙に対し、「自分の人生をただ歩んでいるだけなのに、そこに女性へのあらゆる期待を押しつけられているような気がしました」と苦悩を打ち明けている。

別の親はガーディアン紙に対し、自身の性別に対する周囲からの先入観が「ある種の厄介事をもたらし、動揺させ、人生に害をもたらした」と述べている。こうした苦い経験を子には味わってほしくないとの思いが根底にあるようだ。