管理栄養士の資格があり食品会社に就職が決まるも…

不特定多数を相手にする仕事だけに、最初は抵抗があるものかと思っていたら、ハルの場合は違った。仕事を肯定的にとらえている。風俗嬢は肯定しなければやっていけないからなのか。

就職するまでは、あくまでも就活費用を稼ぐためで、就職したら風俗はやめようと思っていた。風俗店の待機所でエントリーシートを書いて、そこから面接に行っていたという。晴れて内定をもらった。社員数300人ほどの食品会社で、その会社に就職した。当初は会社員一本で働いていたものの、外部とのつながりもでき、交友関係が広がり起業したいと考えるようになっていった。

リクルートスーツに身を包み、鏡の前に立つ女性
写真=iStock.com/byryo
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会社はいやではなかったが、面白くなかった。10ヶ月ほどで退社。資格を生かしてフリーの管理栄養士としてやっていこうと考えたが、それよりも性に関する仕事に興味があった。性の情報発信をしていけたらいいと考えたのである。

20代なら性の業界のほうが成功しやすいのではないかと思った

「20代だったので、好奇心のほうが強かった。栄養に関しては、たくさんの情報が出ているけれど、性は情報が包み隠されているというか、あまり外に出ていない。20代半ばの女の子が性のことをしゃべっているだけで注目されるから、栄養の業界で戦うのと、性の業界で戦うのでは、性の業界のほうが成功しやすいのではないかと思いました。多分に打算的ですね。目立ちたがり屋のところがそうさせたのかもしれなかった」

現在はデリヘルほか2軒のお店にメインで在籍。裏方でもあり、キャストでもある。AVにも出演している。「どちらかと言えば恵まれていると思う」とハルは話す。コロナ前の年収は、約800万円。すごく稼いでいるというわけでもないが、仕事も多岐にわたり面白いという。2020年はコロナで仕事ができなくて一気に減収した。業界全体が沈んでいて、店にもフリー(新規など)の客は来ず、常連客が何とか助けてくれた。そして発覚した子宮頸がん。手術などで、1カ月半休んだこともあり、大きな仕事は飛ばしたので、減収に減収が重なり厳しくなった。

「手術により仕事が制限されたので100万円以上の減収でした。コロナも怖かったので、PCR検査も高いお金を払って受けました。さすがに怖かったから」