医師の心を整え、国境なき医師団に応募

門馬さんには災害支援での苦い経験がある。医師になり数年過ぎた頃、東日本大震災が発生。災害派遣で岩手県沿岸部の被災現場に入った。

「現地は混乱の極み。そうした中で自分なりに動いたものの、サポートする側にうまく回れなかったんですね。自分の思い描いていた医療行為ができないまま東京に戻され、次に派遣される医師にフラストレーションをぶつけたこともありました。『なんでおまえが行くんだ、必要なのはオレの能力だろ』って。今にして思えば、被災地の人たちが望むことに寄り添えず、自分のやりたいことだけを主張していた。反省しかありません」

このときの経験から、相手が望む医療を提供するのが大事だということに気が付いた。その後、国境なき医師団に参加。2019年にパレスチナのガザ地区で医療支援を行った。

「もっと早く参加すればよかったと思うこともあるけれど、岩手での経験がなかったら、自分のやりたいことだけやって帰国して、オレってすごいだろう、みたいな感じだったでしょうね」

これから医師を志す人には「前を向いて自分を試し、磨いてほしい」と声援を送る。

「結局のところ、医師として大事なのは人間性だと思うんです。どれだけ技術や知識があっても、会話がきちんとできないとか、信用できない医師は患者さんに悪影響を与えます。周囲との関係性が構築でき、普通以上の医療が提供できれば、スーパードクターは不要でしょう。そのために学生時代も含めていろんな経験を積むことが大事です。失敗を恐れずに前に進むことを意識すれば必ず失敗からでも学べることがあります。答えは常に前にあると思うんです。いろんな経験をし、時には失敗も恐れず進むことが、人間性を磨くことにもつながり、いつか必ず医師になってから活きてきますよ」

3月26日ドニプロの避難所にて。
3月26日ドニプロの避難所にて。マリウポリから逃れてきた人たちに対し、急きょ頼まれて診察を引き受けた。5歳の子供から80代の高齢者まで計9人を診察。高齢の男性は1週間続いた避難生活で靴を脱げなかったため、足に潰瘍ができていた。出典=『医学部進学大百科