ファンからの要望で生まれた「おつまみベーコン風味」

アスパラガスの味の横展開のひとつ、おつまみベーコン風味は客からの要望が形になったものだ。

「弊社ではパッケージに『こんなお菓子があったらいいな、という夢がありましたら、アイデアをお寄せください』と記載しております。おつまみベーコン風味のアスパラガスはSNSや書き込みから開発しました。アスパラガスをおつまみとして召し上がっていただく機会が多いとわかり、それで、おつまみに特化したベーコン風味を出したのです。

SNS以前は消費者にインタビューしていたこともありましたが、今ではSNSの声を重視しているケースが多くなってきています」

味を横展開する場合、これまでは社内の開発陣が主導してきた。しかし、おつまみベーコン風味をはじめ、熱心なファンや愛好者の声が新商品に反映されるようになってきている。

もっとも、これはギンビスに限らず、またスナック菓子に限らず、さまざまな商品の開発にあてはまることかもしれない。

商品の味を増やす展開とともに、ヒット商品をロングセラー化、定番化するもうひとつの手法が食べ方のアレンジを提唱すること。商品をそのまま食べるだけではなく、ケーキのトッピングにする、ビスケットをスープに浸して食べるといった食べ方を提案している。

洋服でいえば、商品だけを宣伝するのではなく、着こなし方を同時に提案するのに似ている。

ギンビスではアスパラガス、たべっ子どうぶつ、ともに初期からパッケージの一部にそうした食べ方のアレンジを掲載してきた。

たべっ子どうぶつは中国でも販売されている
撮影=プレジデントオンライン編集部
たべっ子どうぶつは中国でも販売されている

ヒット商品はファンと一緒に育てていく

吉村さんは「はい、ヒット商品のアスパラガスが出た当時からやっていることです」と言った。

「アスパラガスについては今、コーンスープにつけて食べる(ダンキング)、ヌテラ(チョコレート風味のスプレッド)をつけて食べるといった提案をしています。数年前ですと、アスパラガスにレーズンとクリームチーズを挟んで召し上がっていただくこともやりました。ただ、アスパラガスは細いからクリームチーズを挟むのは技術が要りますが……。なので、クリームチーズをつけて食べていただいてもいいです。

食べ方のアレンジはSNSなどでお客さまがご自身で発信されます。それを見て真似される方が多いように思います。

たべっ子どうぶつは発売当初からパッケージの横の部分にお客さまからいただいたアレンジの提案を載せています。マシュマロを挟んだり、デコレーションケーキのトッピングにしたり、最近ではガトーショコラに載せて一緒に焼き、すごくかわいいケーキをつくっていただいていたり……。弊社の商品だけではなく、コロナ禍で在宅時間が増えたこともあって、いろいろとアレンジして召し上がる方が増えていると思います」

たべっ子どうぶつ、アスパラガスのヒットとロングセラー化を調べてみると、わかったことがある。思いつきだけでもヒットする商品だって少数はあるかもしれない。しかし、長年、それを売っていくには経営の力が後押ししなければならない。そして、ヒット商品はそれをロングセラーにしない限り、経営の基盤にはならない。

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