突然の税務署からの電話

年が明けて確定申告を終えた吉田さんは、仕事やプライベートで忙しい毎日を送っていた。心配の種だった税金のことも、すでに頭から抜けている。

小林義崇『あんな経費まで! 領収書のズルい落とし方がわかる本』(宝島社)
小林義崇『あんな経費まで! 領収書のズルい落とし方がわかる本』(宝島社)

春が過ぎ、夏が過ぎ、日々の業務に追われ、確定申告のこともすっかり忘れかけた9月のある日、吉田さんの携帯電話に知らない電話番号からの着信履歴が残っていた。留守番電話を聞くと、税務署の職員だという。

嫌な予感がした吉田さんが、慌てて税務署に折り返しの電話をかけると、職員は「税務調査を行いたいので、3日間ほど時間を取ってほしい」と説明した。

吉田さんは断りたい気持ちを感じながらも、断る理由が思いつかない。そうして、1カ月後に吉田さんの税務調査が行われることになった。吉田さんは自宅の一部を仕事場にしているため、税務署の職員が自宅まで訪ねてくるという。

やってきた税務署職員

調査当日の午前10時。チャイムが鳴ってドアを開けると、スーツ姿の2人の職員が立っていた。ベテラン職員と新人職員のペアという雰囲気だ。

まずは挨拶もそこそこに、リビングで雑談を交えて仕事内容など簡単な聞き取りが行われた。その流れで「それでは、帳簿を見せてください」と言われた吉田さんは、不安を感じながら領収書や請求書などをまとめたバインダーを手渡した。

職員がバインダーを見ている間は別の部屋で仕事をしていてもいいと言われたが、やはり手に付かない。時間がとても長く感じられる。

ときおり職員から「ここは自宅兼仕事場ということでよろしいですか?」「雑費として計上しているものは、具体的にどのようなものなのですか?」といった質問がなされ、その都度吉田さんはできる限り説明しようとした。