日銀の信用が揺らげば、貧乏と増税地獄が待っている

日銀の債務超過がなぜ大問題なのか。

それは私たちの使っている日本円の価値に直結するからだ。つまり、日銀の債務超過が続き、通貨の信認が揺らげば、円の価値は大暴落する。ハイパーインフレという究極の大増税だ。日本人はあっと言う間に貧乏な国民になる。

日本人が円の価値を信じていても意味がない。外国人投資家が売りをかけ、円を手放せば、通貨の信認は揺らぎかねない。

今の10年債金利は0.25%なのだから、「5%とか11%などありえない」などと言わないでいただきたい。

現在、現物市場より巨大な国債債券先物市場では、10年債金利6%の架空の債券が取引されている。それは先物市場が創設された1985年時点では10年金利の過去の平均は6%だったからだ。

1%や2%の金利上昇を想定外などと到底言えない。実際、現在の0.25%の利回りは日銀が指値オペで金利上昇を必死に抑えている結果に過ぎない。

過去の例からして長期金利は中央銀行や国がいつまでも抑えきれるものではない。

東京都中央区 日本銀行本店
東京都中央区 日本銀行本店(写真=Wiiii/CC-BY-SA-3.0,2.5,2.0,1.0/Wikimedia Commons

世界では通用しない日銀の言い訳

12月6日の衆議院財政金融委員会では、藤巻健太衆議院議員が、「これほど巨額な評価損を抱えた場合、日銀の信用は大丈夫か?」と聞いたところ、黒田東彦日銀総裁は、「日銀は償却原価法すなわち簿価会計を採用しているから財務上、損失が現れることはない」とお答えになった。12月2日の浅田均参議院議員に対する雨宮副総裁の答弁も同様だった。

しかしこの答弁は国際標準では通用しない。

たとえば皆さんが住宅ローンを借りる時に、銀行はどんな評価方法で皆さんの信用を測るのか? 銀行サイドが決める評価方法であり、皆さんが採用する評価方法ではない。世界の金融界では、法人や公的機関相手では時価評価でチェックする。特に危険状態かも? と思ったら時価評価はマストだ。それは対民間だけでなく対中央銀行であれ、対国であれ同じだ。

私の勤めていた頃のJPモルガンでは20年前でさえ、会長のボーナスもディーラーのボーナスも取引相手の信用調査も、すべて時価会計であり、簿価会計などという会計は、どこにも存在しなかった。

簿価会計など前世紀の遺物だったのだ。債券は満期になって満額が返ってくるから簿価評価でいいという人も日本にはいるが、それは日本でしか通用しない。世界の信用審査は問答無用で時価評価なのだ。

仮に簿価会計で信用を測り、純資産なら問題なしとなれば、リーマン・ブラザーズも、山一證券も倒産などしなかっただろう。

つい先日、英国のトラス前政権が市場の反乱で史上最短で崩壊したが、あれも債券の時価評価の結果である。英年金がデリバティブ取引の担保として提供していた国債が時価評価をすると大きな評価損になったからだ。債券であろうと時価評価は株主の利益を守るためにはマストなのだ。

日銀への信用分析も世界は当然ながら時価評価で行う。日銀だけ、日銀の言いなりに簿価評価で見られることはない。日銀の主張は夢物語にすぎない。