「放っておいてくれ! もうその話はするな!」

障害年金を請求するためには、たくさんのハードルをクリアする必要があります。その中のひとつに「保険料納付要件」というものがあります。保険料の納付要件とは、次のようなものです。

(原則)
初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。

(特例)
初診日が令和8年3月末日までにあるときは、次のすべての条件に該当すれば、納付要件を満たすものとする。

・初診日において65歳未満であること
・初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと

保険料の納付要件をざっくりいうと「その障害で病院を受診する『前まで』に未納状態を解消しておかないと、障害年金が請求できないことがある」というものです。

長男は国民年金の免除や猶予などの手続きをしてなかったのでしょうか。不思議に思った筆者は、母親に事情を聞くことにしました。

長男が20歳になった時、母親は長男に国民年金はどうするのかを聞いてみました。すると

「自分で何とかするから放っておいてくれ! もうその話はするな!」長男は顔を真っ赤にし、そう怒鳴りつけてきたそうです。そのようなことがあり、両親は長男の国民年金についてそれ以上関与することはありませんでした。長男宛てに年金の通知が届いても、両親は中身を確認することもしなかったそうです。

日差しが当たるベッド
写真=iStock.com/AmberLaneRoberts
※写真はイメージです

長男が20歳の時は大学生だったようなので、学生の納付猶予の手続きをする気持ちはあったことでしょう。しかし、手続きを先延ばしにしているうちに、すっかり忘れてしまったのかもしれません。

現在では国民年金の未納が続いていると督促状などが何度も送られてきたり電話が何度もかかってきたりします。場合によっては財産が差し押さえられてしまうこともあります。

しかし当時は国の管理もそれほど厳しくなく、督促状などは一応送られてきますが、本人が相談や手続きなどのアクションをおこさなければ未納状態のまま放っておかれる。そんな時代でした。