「え、長男は障害基礎年金の請求ができるのですか?」

入院から1カ月が過ぎた頃、医師から「別の病院に移ってリハビリを続けてください」との指示があったので転院。その後、転院先の病院で3カ月ほどリハビリを兼ねて入院した後、自宅に戻ることになりました。長男は自宅の中でも車いすに座って生活することを余儀なくされ、日常生活にかなりの支障が出ているようです。

そこまで話を聞いた筆者は「ひょっとすると何とかなるかもしれない」と感じ、母親に次のような提案をしてみました。

「生きていく上でお金の話は避けて通れません。まずはご長男の収入を確保するところから考えてみたいと思います。具体的には、脳梗塞による右半身まひ、いわゆる肢体障害で障害基礎年金の請求をしてみましょう」

「え、長男は障害基礎年金の請求ができるのですか? 以前、年金事務所へ相談に行ったときは『請求する権利はありません』と言われたのですが」

「確かに精神疾患の方では保険料の納付要件を満たしてはいませんでした。しかし脳梗塞による右半身まひの障害の方は、少なくとも保険料の納付要件の特例は満たしています。請求することは可能でしょう」

脳卒中のイメージイラスト
写真=iStock.com/peterschreiber.media
※写真はイメージです

「そうなんですか! 一度ダメと言われてしまったら、もう二度と障害基礎年金は請求できないと思っていました。もし障害基礎年金が受給できたとすると、いくらくらいになるのでしょうか」

「障害基礎年金は1級と2級があります。それぞれの金額は次の通りです」

障害基礎年金の2級に該当した場合
障害基礎年金2級 月額 約6万4800円
障害年金生活者支援給付金 月額 約5000円
合計 約6万9800円

障害基礎年金の1級に該当した場合
障害基礎年金1級 月額 約8万1000円
障害年金生活者支援給付金 月額 約6200円
合計 約8万7200円
※それぞれの金額は令和4年度のもので100円未満切り捨て

じっくり時間をかけて金額を確認した母親は、筆者に質問をしてきました。

「長男は障害基礎年金の何級に該当しそうでしょうか?」

「障害基礎年金の何級に該当するかどうかは、主に診断書や病歴・就労状況等申立書の記載内容で判断されます。なので、今の段階では何級に該当するのかは分かりません。診断書は医師が作成しますから、こちら側ができることとしては病歴・就労状況等申立書にできるだけ詳しく日常生活の困難さを記載することです」

そこまで説明した筆者は、母親から長男の日常生活の状況も聞き取ることにしました。長男は右上半身、右下半身ともに自分の意思で動かすことがほとんどできません。

長男は右利きだったので、日常生活にかなりの困難さを抱えています。食事は左手でスプーンやフォークを使って食べているのですが、うまく口元まで運べずにこぼしてしまったり、食事を終えるまでに時間がかかってしまったりしています。

着替えも一人ではできないので、母親に手伝ってもらっています。自宅では室内でも車いすに座って生活をしなければなりませんが、朝ベッドから起き上がることができないので、毎日母親に抱きかかえてもらい車いすに座らせてもらっています。夜寝る時もやはり母親に抱きかかえてもらって車いすからベッドの上に横に寝かせてもらっています。食事の準備や後片付け、掃除、洗濯、買い物は困難なので、すべて高齢の母親に頼っている状況です。

入浴は母親に手伝ってもらっても入ることが難しいので、訪問入浴を週2回受けています。その他、訪問リハビリとデイサービスを週2回ずつ。訪問リハビリでは右手足が凝り固まらないように曲げ伸ばしをしてもらっています。デイサービスでは、機械を使って右手足の曲げ伸ばしをするリハビリを受けています。