課長になるまでなぜ平均20年以上かかるのか

では、なぜそうしたことが起こったのであろうか。企業の方には怒られてしまうかもしれないが、直接には私の教育もあるかもしれない。日頃から、企業についてできるだけ“客観的”な情報を提供しようとしており、その結果、どんな企業に就職しても未来はどうなるかわからないという認識をもったのかもしれない。

だが、たかが一教員の影響力などはそれほどでもないだろう(少なくともないことを祈る)。実は考える以上に学生というのは世の中の動きに敏感なもので、絶対に大丈夫だと思われた大手航空会社が倒産にまで追い込まれた状況や、つい最近まで花形だった大手電機メーカーの業績不振とその顛末としての大型リストラなどを新聞などで読み、そうした状況に、自分がいつ置かれるかもしれないと思う可能性を考えたのであろう。

またどこの企業に行っても恐らく聞かれる「チャレンジ精神のある人を求む」「実力で処遇する人事方針である」などのメッセージは、シューカツに疲れた体には、「こんな厳しい世界では私は乗り切っていけないかもしれない」という感覚に陥らせるのだろう。

また同時に女性は、説明会などで、どんなに企業が両立支援施策などがあることを強調しても、やはり出産や育児とキャリアとを両立させていくことはとても難しいという(多分正しい)予想のもとに、会社が変わっても、自分のキャリアを続けていくためには、何が必要なのかを考えるようになってきたのかもしれない。

今回の話題とは少しずれるが、会社の選択にあたって、企業のグローバル度を気にし始めたのも同様の現象だろう。昨年あたりから急激に企業が「グローバル人材求む」をメッセージとして出し始め、それに積極的に対応する学生と消極的な反応を示す学生が明確に分かれてきたように思う。学生というのは案外企業の動きやメッセージに敏感なのである。